第2039話 熱血、ドキドキ、体育祭3(5)
「ま、それはすっごい気になるけど、次は玉入れだから切り替えて行こ! みんな、絶対勝とうね!」
「「「「「おおっ!」」」」」
魅恋がクラスメイトたちに声を掛けると、クラスメイトたちが一斉に応えた。ここまで人望があるというか人気のある人間も珍しい。前から思っていたが、魅恋は陽華や明夜と同じタイプの人種だなと影人はそう思った。
『さあさあ、お次はご注目! 2年生の団体競技の玉入れです! 団体競技の得点はかなりの高得点! 赤組と白組、それぞれここで大量の得点が欲しいところです! それでは、2年生の入場です!』
二人三脚が終わり、いよいよ2年生の団体競技がやって来た。影人たち2年生は各クラスごとに整列し、運動場に入場した。
(めんどくせ。さっさと終わらねえかな)
影人は内心でそう思いながら、籠と球が置かれている場所まで移動すると、他の者たちと同じように、しゃがんでその場に待機した。
『それではルールをご説明しましょう! 玉入れはトーナメント形式で行います! 各クラスまずは対峙しているクラスと争っていただき、勝利した方が次に進めます! そして、最後まで残った2つのクラスで決勝戦をしていただき勝った方が玉入れ優勝です! 2年の皆さん、張り切っていきましょう! では早速行きますよ! 2年生の皆さん準備の方をお願いします!』
指示を出された2年生たちが立ち上がる。対戦カードは2年1組と2年2組。2年3組と2年4組。2年5組と2年6組。2年7組と2年8組。影人たちの2年7組の初戦は2年8組である。この勝負に勝てば、次の試合にといった形だ。
「それでは、これより2年7組対2年8組の玉入れ対決を行います。7組は赤い籠に、8組は白い籠に球を入れてください。両クラス、開始の合図があるまでその場で待機してください」
2年7組と2年8組の戦いの審判役の生徒が指示の言葉を述べる。
そして、
『各クラス準備が整ったようですね! では、玉入れスタートです!』
実況の合図と共に影人たちは一斉に地面に転がっている球を拾った。
「ああもう! 悔しいー!」
約20分後。控え場所であるテントに戻っていた魅恋は言葉通り悔しそうにそう叫んでいた。
(まあ、現実はそう甘くないって事だな)
影人は特に普段と変わらない顔で内心そう呟いた。玉入れの結果は、影人たちのクラスは初戦敗退という何とも情けないものだった。
「ま、まあ仕方ないですよ。それだけ相手が手強かったって事ですし。確かに、団体競技では負けちゃいましたけど、赤組としてはまだ負けてません。だから、諦めずに応援して頑張りましょう!」
「海公っち・・・・・・うん、そうだね! 赤組として勝てば問題なし! よーし、みんなまだまだ応援頑張ろうぜー!」
海公の励ましの言葉を受けた魅恋が明るくそう言うと、クラスメイトたちも明るい顔でそれぞれ頷いた。落ち込みやすいのも若さなら、立ち直りの早さもまた若さか。前髪野郎は格好をつけ、そんな事を考えた。どこから目線やねん。
『さあさあさあ! 気づけば体育祭午後の部も大詰め! 次が最終競技となります! 最終競技は3年生の団体競技、リレー戦です! ここが大一番! 赤組、白組の現在のポイントから考えるに、この競技で1位を取った組が体育祭優勝となります! 白熱する事は必至です! それでは、3年生の入場です!』
実況と共に3年生が運動場中央に入場する。その中には、当然ながら影人がよく知る者たち――陽華、明夜、イズ、暁理、光司、A、B、C、D、E、Fの姿があった。
(・・・・・・本当なら、俺もあの中にいるはずだったんだがな)
思わず影人はそう思った。1度死んで世界から忘れ去られ、零無が影人を蘇らせてくれた結果、影人は留年した。もし、もしも影人が死なず、留年もしていなければ、今頃影人もあの中にいたのだ。その事実が、影人を何とも不思議な気持ちにさせる。
「・・・・・・お前らにとっては最後の体育祭だ。せいぜい頑張って・・・・・・楽しめよ」
影人は小さな声で3年生全員にエールを送った。影人のその声が3年生たちに届く事はない。
だが、
「あ・・・・・・えへへ!」
「ぶい」
「・・・・・・はあ」
「あ、影人だ。ちゃんと僕のこと応援しろよな」
「帰城くん。勝利を君に捧げるよ」
「「「「「「行って来るぜブラザー!」」」」」」
陽華、明夜、イズ、暁理、光司、アルファベットズは影人に気がつくとそれぞれの反応を返して来た。そんな顔見知りたちの反応に、影人は思わず苦笑した。
『準備が整ったようです! それでは3年生の皆さま! 悔いのないようにしっかり走り切ってください! 私も全力で実況させていただきます!』
「行くぞ! 位置に着いて! よーい・・・・・・」
各クラスの最初の走者がスタートラインに着く。スタートを知らせる教師、体育教師の上田勝雄がスタートピストルを天に掲げる。
「ドンッ!」
勝雄はそう言うと同時にスタートピストルを鳴らした。パンッという音が響き、3年生たちは一斉に走り始めた。
――残暑が厳しい青空の下、若者たちが流す汗が太陽の光を反射して煌めく。その煌めきは、青春の煌めきであった。




