第2038話 熱血、ドキドキ、体育祭3(4)
『朝宮さんゴール! 一瞬最下位かと思われましたが、見事に1位を勝ち取りました! いったい朝宮さんの紙には何が書かれていたのでしょうか!? 気になるところではありますが、残念! お題はシークレット! 本人と確認係以外知ることは出来ません! だけど、気になる! 私、とても気になります!』
「朝宮さーん! 何が書かれてたの!?」
「陽華ー! 何が書かれたのか教えてー!」
「答えてくれ朝宮さん! 答え如何によっては俺たちはその前髪くんを許せなくなる!」
実況に煽られるように周囲の生徒たちが陽華にそう声を飛ばす。中にはかなり危ない事を言っている輩もいた。勘弁してくれ。こっちは被害者だと影人は声を大にして訴えたかった。
「おい、そろそろ手を離せ朝宮。で、結局紙には何て書かれてたんだよ」
影人は少し苛立った様子で陽華の手を振り解いた。影人はそのまま自分も気になっていた事を陽華に聞いた。
「あ、ご、ごめんね。えっと、その紙には・・・・・・」
「紙には何だよ」
陽華は顔を赤くさせ、ごにょごにょと口ごもった。影人は催促するように言葉を掛ける。
「その・・・・・・と、とにかく帰城くんを連れてこなきゃダメだったんだよ! じゃ、じゃあね帰城くん! 助かったよ! ありがとう!」
「あ、おい待て朝宮!」
しかし、陽華はそう言い残すと凄まじいスピードでどこかへと走って行った。影人は陽華を呼び止めようとしたが無理だった。
「ったく、なんだってんだよ・・・・・・」
結局、目立ってしまっただけで陽華が影人を連れて来た理由も分からない。影人は解消できない疑問を抱えたままその場に佇んだ。
「・・・・・・世の中って何が起こるか分からないものね」
一方、その光景を見ていた借り物確認係の女子生徒はポツリとそう呟いた。女子生徒の手には陽華から預かった紙がある。そこに書かれていたのは――
「・・・・・・あの人が朝宮さんにとって、大事な人なんて・・・・・・」
女子生徒が紙に目を落とす。そこには、「大事な人(異性)」という文字が書かれていた。
「ひゅー! 影人目立ってたね! ねえねえ、影人は何で朝宮パイセンに連れてかれたん!?」
玉入れが近い事もあり、影人が2年7組の控え場所のテントに戻ると、魅恋が興味津々といった様子でそう聞いてきた。魅恋以外のクラスメイトたちも、影人に興味の込もった視線を向けて来た。
「さあ・・・・・・俺も朝宮・・・・・・先輩に理由を聞いたんですが、教えてもらえませんでした。だから、俺も何で連れて行かれのかは分かりません」
「そうなん? うー、めっちゃ気になる! 何で影人なんだろ。やっぱり前髪が長い人がお題だったのかな?」
魅恋は腕を組むと悩むようにそう言った。それは影人も知りたかったが、答えを知るのは陽華と陽華から紙を受け取り確認した女子生徒だけだ。陽華は先ほど教えてくれなかったし、確認係の女子生徒も答えてくれるとは思えなかった。




