第2035話 熱血、ドキドキ、体育祭3(1)
「――遂にこの時が来たか。まさか、友と戦う事になるとはな・・・・・・」
「ああ・・・・・・運命ってやつは残酷だな。だが、人生には誰が相手でも戦わなければならない時がある」
「それが今。悪いが、俺はお前たちの屍を越えて行くぜ・・・・・・!」
体育祭、午前の部の最終競技、騎馬戦。幾多の騎馬を倒し、残った騎馬は3組だった。1組目はAこと窯木篤人を大将とする騎馬、2組目はBこと天才を大将とする騎馬、3組目はEこと梶谷英賢を大将とする騎馬だ。A、B、Eは互いの顔を見合わせ、真剣な様子でそう言葉を交わした。大将を支える各クラスの3人の生徒たち――騎馬は4人1組で構成されている――もそれぞれ真剣な様子だった。
「じゃあ・・・・・・」
「ああ・・・・・・」
「ここで・・・・・・」
A、B、Eが己の気力を最大限にまで高める。緊張感が運動場に張り詰める。騎馬戦に参加し、A、B、Eに倒された生徒たちもゴクリと唾を飲む。
「行くぞッ!」
「終わらせるッ!」
「決めるッ!」
A、B、Eの気合いの込もった言葉と共に、3人を支える騎馬たちも動き始める。A、B、Eは互いのハチマキを激しく取り合い始めた。
『おーっと! 3年2組の窯木篤人くん、3年3組の天才くん、3年4組の梶谷英賢くん、一斉に仕掛けました! 窯木くんと梶谷くんは同じ赤組なので、協力して天くんのハチマキを取れば1位と2位を独占できるのですが、そんな事は全く考えず本気でハチマキを取り合っています! だがそこがいい! 価値があるのは最後まで立っていた者のみ! これぞ本当の戦いだー!』
「「「「「わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」」」」」
「いいぞ! 熱い、熱いぜ! お前ら全員ナンバーワンだ!」
実況に煽られたかのように大きな歓声が上がる。前髪野郎も歓声を上げた内の1人だった。バカモードの前髪はA、B、Eを応援した。
「うぉぉぉぉぉぉっ! 俺の、俺たちの勝ちだぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
そして数分後。運動場中央には激闘を制した者の姿があった。赤と白のハチマキを掲げていたのは、Eこと梶谷英賢だった。
『決まったぁぁぁぁぁぁっ! 今ここに最強の騎馬が決定いたしました! 1位は3年4組の梶谷英賢くんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!』
「「「「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」」」」」
実況役の女子生徒が高らかにEの名を叫ぶ。瞬間、運動場は爆発的な歓声に包まれた。
『皆さん、素晴らしい戦いをありがとうございました! それでは、これで午前の部を終了いたします! 午後の部は午後1時30分から開始予定です! では皆さん午後の部でまたお会いしましょう! アディオス!』
ハイテンションな実況役がそう告げ、風洛高校の体育祭、午前の部は終了した。




