第2032話 熱血、ドキドキ、体育祭2(3)
「っ、先輩方・・・・・・?」
「え!? な、何事!?」
陽華、明夜、イズ、暁理の姿を見た海公と魅恋が驚く。2人の事を知っている陽華と明夜は、こう言葉を返した。
「あ、春野くんに霧園さん! こんにちは!」
「こんにちは後輩ズ。そう言えば、2人は帰城くんのクラスメイトだったわね」
「そ、そうですけど・・・・・・え、もしかしてパイセン達って影人と知り合いなんですか?」
魅恋はどこか信じられないといった顔で陽華たちと影人の顔を交互に見比べた。その顔は「え、こんな有名で美少女な先輩たちと、前髪長すぎ陰キャが知り合いって流石に嘘だよね?」という感じだった。少なくとも、影人にはそう読み取れた。
「うん! そうだよ!」
「ええ。私たちと帰城くんの出会いは話せば長くなるわ。涙なしでは語れない、それこそ海千山千の・・・・・・」
「っ、おい月下・・・・・・先輩。あの、話を盛るのはやめてもらえませんかね」
まだ影人が留年生だと知らない魅恋がいる手前(恐らくはだが)、影人は本性を隠し、他人行儀に明夜にそう言った。
「え? ど、どうしたの帰城くん!? 明夜に向かって先輩なんて!? どこかおかしくなっちゃったの!?」
「う、うわぁ・・・・・・何だろうこの感覚。ものすごく気持ち悪い。僕、影人に先輩とか絶対言われたくないな・・・・・・」
「何となく事情は察しますが・・・・・・それでも、頗るゾッとしますね」
影人の明夜に対する敬語を聞いた陽華、暁理、イズはそれぞれそんな反応になった。
「話は変わるけど・・・・・・君たちは影人のクラスメイトって事でいいのかな。僕は早川暁理。よろしくね」
「私はイズ・フィズフェールと申します。以後、よろしくお願いします」
「あ、もちろん知ってます! 2年の霧園魅恋です! こちらこそよろしくお願いします!」
「同じく2年の春野海公です。帰城さんにはいつもお世話になっています」
自己紹介をしてきた暁理とイズに対して、魅恋と海公も自己紹介を行った。暁理はしばらくジッと魅恋と海公を見つめた。
「あ、あの僕たちの顔がどうかしましたか?」
「うん? ああ、ごめんね。2人とも凄く可愛いなって。うーん、これは色々とマズい気が・・・・・・でも、普通に考えればこんな前髪陰キャを好きになるはずは・・・・・・いや、だけど僕を含めての前例が多いし・・・・・・」
「「?」」
暁理は後半ブツブツと何かを呟いていた。暁理の呟きが聞き取れなかった魅恋と海公は、不思議そうな顔色を浮かべた。
「やっぱりパイセン達と影人って知り合いなんだ・・・・・・影人って何者?」
「・・・・・・別に何者でもないですよ。ただの霧園さんや春野くんのクラスメイトです。それ以上でも以下でもない」
魅恋の問いかけに影人はそう答える。影人はそのままこう言葉を続けた。
「それで、俺に何か用ですか霧園さん。団体競技の時間はもう少し後だと記憶してますが」
「いや、別に用っていう用はないよ? ただ、頑張ったクラスメイトに励ましの言葉かけとかないとなって思っただけだし。取り敢えずお疲れ! 玉入れは頑張って勝とうぜ!」
魅恋は明るくサムズアップした。嫌味のない明るさだ。影人は思わず小さく笑ってしまった。




