第2031話 熱血、ドキドキ、体育祭2(2)
「あ、いたいた。陽華、早川さん」
すると、明夜が現れた。明夜の横にはイズの姿もあった。
「珍しいですね。普段の帰城影人が前髪を上げているなんて」
「うわっ、本当だわ。うーん、やっぱり帰城くんって普通にアレよね・・・・・・暗いイケメンっていうか、一部の人たちには大人気な感じというか・・・・・・」
イズと明夜も影人を見てそれぞれの感想を漏らす。影人は新たに現れた2人を見て露骨に顔を顰めた。
「げっ・・・・・・何でお前らまで来てるんだよ。ふざけんな。これ以上面倒な奴らが増えてたまるか。じゃあな」
「陽華を労いに来たからです。あと、いきなり面倒な奴ら扱いは不快です。やめてください。殺しますよ」
「・・・・・・マジトーンで殺人宣言するなよ。お前が言ったらシャレにならねえんだから」
影人はイズに軽く抗議の声を上げると、周囲に顔を向けた。その様子は何かを警戒しているようだった。
「? どうしたの帰城くん」
「いや、お前らが来たって事は香乃宮の奴も来る可能性が高いだろ。あいつまで来たらいよいよ収拾がつけられねえ・・・・・・」
明夜がそう聞くと影人はそう答えた。いつもなら、こういう時は光司も参戦してくる確率が非常に高い。しかも、いま影人は素顔を晒しているので、余計に面倒になる事は確実である。
「香乃宮光司なら運営の仕事に精を出していますよ。競技以外の時間は基本的に運営に携わっているようなので、あなたに構う時間はないでしょうね」
「そうか・・・・・・それは朗報だな」
影人はホッと息を吐いた。光司に気を遣わないだけでも正直だいぶ楽だ。残暑の影響か、髪も随分と乾いてきた。影人は前髪を下ろした。
「あ・・・・・・も、もう下ろしちゃうの? その、もっと帰城くんの素顔見てたかったなーっていうか・・・・・・」
「そうね。私なんてまだ一瞬しか見てないわ。帰城くん、もう少し前髪を上げていてよ」
「ぼ、僕は別にどっちでもいいからね。でもまあ、前髪を上げてる君の方がいつもよりは多少マシというか・・・・・・」
「うるせえ。もう乾いたし、こっちの方が落ち着くんだよ」
陽華、明夜、暁理はいつもの前髪野郎に戻った影人を見て、ガッカリとした様子になった。影人はしかし、取り合わなかった。
「帰城さーん! お疲れ様です!」
「あ、いたいた! いやー残念だったね影人! でも、頑張ったよ! 良き良き!」
影人が前髪を下ろすと、また聞き覚えのある声が聞こえてきた。新たに現れたのは、影人のクラスメイトである海公と魅恋だった。
「っ、春野、霧園・・・・・・」
海公と魅恋の姿を見た影人は2人の名前を呟いた。海公は別にそうでもないのだが、2人が来た事によって更に面倒な事になりそうだと、影人は思った。




