第2028話 熱血、ドキドキ、体育祭1(4)
『では、まず障害物競争の概要を説明させていただきます! 選手の皆さんは、用意された障害物をクリアしてゴールしてください! 順位は1位から6位までで、早くゴールした方が得点が大きくなります! 次に、障害物の種類を説明いたします! 障害物は全部で5つ! 1つ目はマットで前転! 2つ目は跳び箱! 3つ目は綱潜り! 4つ目は縄跳び! そして、最後の5つ目が飴食いです! さあ、では早速競技を始めて行きましょう! 最初の列の方はスタートラインまで移動してください!』
指示をされた最初の列の生徒たちがスタートラインにつく。赤組が3人、白組が3人の計6人だ。それぞれの学年はバラバラだが、その目は自分が属する組の勝利のために燃えていた。
「位置に着いて! よーい・・・・・・」
競技開始の合図をする係の教師がパンッとスタートピストルを鳴らす。生徒たちは一斉に走り始めた。
『さあ障害物競争も残すところ最後! しかも、偶然ですが、最後のレースは我が風洛高校が誇る有名人ばかりです! 皆さんの心を代弁して、この私がご紹介を行います! 今まで走った皆さんはごめんなさい! しかし、これも全て体育祭を盛り上げるためなのです!』
「は・・・・・・?」
影人や他の者たちがスタートラインに着くと、突然実況役の女子生徒がそんな事を言い始めた。さっさと終わらないかと思っていた影人は、訳がわからないといった顔になる。そして、影人の反応とは裏腹に、観客たちは「「「「「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」」」」と明らかに盛り上がっていた。この高校はバカしかいないと影人は思った。
『まず第1コーナーは風洛高校が誇る名物コンビの1人! 白組、3年5組の朝宮陽華さんです! 元気いっぱいで運動神経も抜群! このレースの1着候補です!』
「はーい! 頑張ります!」
実況役にいきなり紹介された形だが、ノリがいい陽華は観客に向かって手を振った。
「うおー! 朝宮さーん!」
「頑張ってー!」
「先輩カッコいいー!」
「頑張れよ朝宮! お前の運動神経は本物だ!」
観客たちは陽華に応援の声を送った。その声援は、陽華が風洛高校の生徒や教師たちに普段どう思われているのかを端的に示していた。
『続きまして第2コーナー! カッコ可愛い僕っ子系! 実は男女ともに大人気! 赤組、3年6組の早川暁理さんです! 早川さんの普段とは違う姿は見れるのでしょうか! 乞うご期待です!』
「うっ、ちょっとというかかなり恥ずかしいな・・・・・・でも、今日くらいノリよくしないとね。僕も頑張るよー!」
暁理も少し顔を赤くしながらも、観客たちにそう声をかけた。
「きゃー! 早川さん頑張ってー!」
「可愛いよ早川さーん!」
「瞬き厳禁で見るよ!」
暁理への声援も女子、男子問わずにそこかしこから上がった。その声援は、実況の紹介が嘘ではない事を証明していた。
『さあさあ! お次は第3コーナー! 風洛高校が誇る筋肉マッチョ! 白組、2年4組の柿谷力也くんです! 今日もキレてるよー!』
「ありがとう! この筋肉に誓って必ず勝利します!」
紹介されたムキムキのイケメン男子生徒が右手を天に掲げる。すると、再び歓声が起こった。
「うぉぉぉぉ! 頑張れ柿谷! お前がナンバーワンだ!」
「その筋肉の力を見せてくれ!」
「イッツアパーフェクトボディー!」
主に男子生徒から応援の声が上がる。障害物競争で何をどうやって筋肉の力を見せるのか。影人は甚だ疑問だった。
『ペースを上げて行きますよ! 次は第4コーナー! あざと過ぎて可愛い! そのあざとさに男子生徒たちはメロメロだ! 期待の1年生! 赤組、1年3組の愛川風香さんです!』
「ひどいです〜! 私、全然あざとくなんてないですぅ〜! きゃぴ♡」
紹介されたのは、ふわふわの茶色がかった巻き毛が特徴の女子生徒だった。全体的に小動物のような可愛さを感じるような女子だった。
「風香ちゃーん! 今日も可愛いよ!」
「「「「「アイラブ風香! アイラブ風香!」」」」」
男子生徒たちからの圧倒的な歓声が上がる。特に、「アイラブ風香」と書かれているハチマキとハッピを着ているファンクラブのような男子生徒の集団が目立っていた。
『続きまして第5コーナー! こちらも期待の1年生です! その頭脳は超高校級! あまりの天才ぶりに風洛高校の教師たちがドン引き! いったいなぜ彼は風洛高校に来たのでしょうか!? 白組、1年1組の徳永秀明くんです!』
「ふっ、僕が1着になる可能性は限りなく0パーセントですね」
次に紹介されたのはメガネをクイっと持ち上げた男子生徒だった。そんなドヤ顔で何を言っているのだろうか。本当に頭がいいのか。バカにしか見えないと影人は率直に思った。
「いいぞー! 頑張れメガネくん!」
「頭脳キャラでもやれるってところ見せてくれー!」
「徳永氏、ファイトですぞ!」
ノリがいい生徒たちが応援の声を送る。影人はその声をのんびりと聞いていた。




