第2025話 熱血、ドキドキ、体育祭1(1)
『――それでは、これより第46回風洛高校体育祭を開催します。皆さんの素晴らしい健闘を祈ります』
10月上旬のとある日の朝。見事なまでに晴れ渡った青空の下、朝礼台の上に立った生徒会長――光司が、マイクを通して体育祭の開会を宣言した。
「「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」」」」
光司の宣言を聞いた、風洛高校の全生徒たちから歓声が上がる。同時に、教師陣も歓声を上げていた。特に、体育教師の上田勝雄34歳が「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」と一際大きな声を上げていた。勝雄の隣にいた、影人たちのクラスの担任教師、榊原紫織はそれはそれは嫌な顔で両耳を塞いでいた。
『では、各クラス所定の位置に移動してください、最初の競技に出場する方は、体育倉庫前に集合をお願いします』
光司のアナウンスで生徒たちは一斉に移動を始めた。
「・・・・・・暑い。本当に10月かよ」
移動をしながら、影人は思わずそう言葉を漏らす。こんな暑さの中でこれから数時間の間外に出て、運動をしなければならないのだからキツい。影人のようなモヤシからしてみれば拷問である。
「よーし、みんな! 目指せ優勝! 頑張っていこうぜー!」
「「「「「おおっ!」」」」」
影人たち2年7組の生徒たちが控え場所であるテントの中に到着すると、魅恋が皆にそう言った。ノリのいいクラスメイトたちは魅恋の心意気に応えるようにそう返事をした。
(元気な奴らだな・・・・・・まあ、これも青春か)
影人はぼんやりとそう思うとテントから離れた。別に絶対にクラスの待機場所にいなければならないという事はないからだ。自分の競技の出番と団体競技の時にアナウンスされる集合場所に行けばそれで問題はない。
「うんうん! 今日は絶対優勝して打ち上げ行こうね! ってあれ? 影人は?」
魅恋はいつの間にか影人が消えている事に気がついた。この一瞬でいったいどこに行ったというのか。
「影人ってあの前髪くん? さあ?」
「知らね。あいつ影薄いし」
「ま、いかにも団体行動苦手ですって感じだし、どっか行ったんじゃない。いいじゃん、いいじゃん。多様性ってやつだ」
クラスメイトたちは特に興味はないといった様子だった。影人は普段から必要最低限のことでしかクラスメイトたちとは言葉を交わさない。例外は海公くらいだ。そのため、クラスメイトの影人に対する興味もほとんどなかった。
「うーん、まあ今はいっか。じゃあ、みんなで赤組の競技者たちを応援しよう! そろそろ始まるから!」
魅恋がクラスメイトたちにそう促す。風洛高校の体育祭は赤組と白組の2つの組に分かれて得点を競い合うというもので、今回2年7組は赤組だ。そのため、赤組の競技者がいい順位になれば、多くのポイントが入る。魅恋の言葉にクラスメイトたちは頷き、テントの下の長椅子に座りながら観戦の形に入った。
「帰城さん・・・・・・」
しかし、海公はどうしても影人の事が気になった。影人が1人が好きだという事は重々承知しているし、競技の時間になればふらっと現れるであろう事も予想できる。しかし、それでも海公は影人と一緒に出来るだけ体育祭を楽しみたかった。海公はこっそりとテントを抜け出すと、影人を捜し始めた。




