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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
2002/2051

第2002話 前髪野郎と光の女神3(5)

「今度は私が決めてみせます!」

 ソレイユがドリブルで敵陣に向かって仕掛ける。だが、ソレイユの前に陽華とレイゼロールが立ち塞がる。

「ソレイユ様! すみませんけど、ボールをもらいます!」

「先ほどのようには抜かせんぞ」

「くっ! ラルバ!」

 陽華とレイゼロールは激しくソレイユにプレスをかけた。流石に2対1はキツい。ソレイユは何とかボールを取られないようにしながら、後方にいるラルバにパスを出した。

「っ、行くしかないか・・・・・・!」

 ソレイユからのパスを受け取ったラルバはドリブルでボールを運ぶ事を選択した。今の状況では、攻撃陣であるソレイユと真夏にパスを出す事は難しいと判断した。

「キベリア、ラルバに対処しろ」

「え、わ、私ですか?」

「お前は守備だろう。仕事をしろ」

「は、はいぃ・・・・・・」

 ソレイユをマークしていたレイゼロールがキベリアにそう指示を出す。キベリアは泣きそうな顔になりながらも、ラルバとの距離を詰めた。

「え、えい!」

 キベリアはラルバの持っているボールを奪おうと足を動かした。

「よっと」

 だが、ラルバは華麗にキベリアの足を避けた。足を空振らせたキベリアは「きゃ!?」と体勢を崩した。

「一応、ソレイユほどじゃないけど、運動は得意な方なんだ。そう簡単には取らせないよ」

 キベリアを抜いたラルバが青チームのゴールに迫る。だが、まだゴールまでは少し距離がある。シュートは狙えない。

「行かせません!」

 ソレイユのマークをレイゼロールに任せた陽華がラルバに迫る。陽華のディフェンスは、キベリアのディフェンスとは比べ物にならないくらいに激しく、しつこかった。

「っ、やるね。でも、俺だって・・・・・・!」

 長年の想い人にいいところを見せたい。分かっている。自分にそんな事を考える資格がないことは。ラルバが犯した大罪は未来永劫消える事はない。

「だけど、それでもッ! 俺だって男だ! そう簡単に諦め切れるもんか!」

 ラルバが溢れ出る自身の想いを力に変える。ラルバは陽華よりも優っているフィジカルの強さを生かし、陽華を突破した。

「あっ!?」

「このまま決める!」

 陽華を突破したラルバはそのままドリブルを行うと、右足を大きく振りかぶった。そして、ゴールに向かって渾身のシュートを放った。

「っ! はあッ!」

 しかし、ラルバの渾身のシュートを光司がパンチングで弾いた。結果、ボールはコートの外に出た。

「連続でゴールはさせませんよラルバ様。僕もキーパーですからね」

「っ、やるな。光司・・・・・・!」

 光司にゴールを阻まれたラルバが悔しげな顔を浮かべる。すると、イズがホイッスルをピッと鳴らした。

「赤チーム、コーナーキックです。キッカーはコーナーエリアに移動してください」

「よし、では私が行こう」

 ロゼが手を挙げる。ディフェンダーがコーナーキックを蹴る場合カウンターが怖いが、ここはリスクを取ってでも得点が欲しい。コーナーキックは得点を狙える大チャンスだ。

「頼んだわよ『芸術家』!」

「必ずゴールを決めますねロゼ!」

 真夏とソレイユはロゼにそう言葉を送った。ロゼは「ああ、任せてくれたまえ」と笑みを浮かべ、コーナーエリアに移動した。

「みんな! 頑張って守り切ろう!」

「コーナーキックはピンチだけど、カウンターのチャンスだわ。逆に得点を狙いましょう」

「ふん。言われずともそのつもりだ。キベリア、次は抜かるなよ」

「わ、分かりました・・・・・・」

 陽華、明夜、レイゼロール、キベリアの青チームもそれぞれ配置につく。明夜はソレイユに、レイゼロールは真夏に、ラルバにはキベリアがついた。唯一フリーの陽華はいつでもカウンターが出来るように、少し離れた場所で待機していた。イズはピッと試合を再開する笛を鳴らした。

「では・・・・・・行くよ!」

 ロゼがコーナーからボールを蹴った。ロゼの蹴ったボールは、美しい弧を描きながら空中を舞った。同時に、赤チームと青チームが動き始めた。

「決めてやるわ!」

「やらせるか・・・・・・!」

「ここで!」

「やらせませんよ!」

「次こそ!」

「あんただけには絶対に決めささないわよ!」

 真夏、レイゼロール、ソレイユ、明夜、ラルバ、キベリアが宙を舞うボールに集中する。

 ロゼの放ったボールは特定の誰かを狙ったものではなかった。ロゼの意図はゴール前のどさくさに紛れて、誰かがゴールする事だった。そして、遂にボールが落下し始め――

「やらせない!」

 しかし、そのボールを光司がジャンプしてキャッチした。光司はゴールを守る事よりも、ボールをキャッチするというリスクの高い選択した。

「朝宮さん!」

「ありがとう香乃宮くん!」

 ボールをキャッチした光司はすぐさまボールを陽華の方に向かって投げた。カウンターの準備をしていた陽華は、光司からボールを受け取ると一気に赤チームのゴールを目指した。

「ヤバっ!?」

「っ、影人!」

 真夏が声を上げ、ソレイユが影人の名を呼ぶ。もはや、陽華と影人の一騎打ちは避けられない状況だ。

「決める!」

「やらせるか! 俺は円◯守だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」

 陽華がシュート圏内まで接近し、右足を振りかぶる。影人は右手を後方に引いた。

 そして、陽華の必殺のシュートが放たれ、影人の神の右手がゴールを守るように突き出された。

「はあぁぁぁぁぁッ!」

「うおぉぉぉぉぉッ!」

 陽華の放った必殺シュートが影人の右手に吸い込まれる。バチバチと火花が散り、貫く力と止める力が拮抗する。これぞ、まさに超次元サッカー。

 ――という展開になるはずもなく、陽華の放ったシュートは影人の右手に掠る事もなく、綺麗にゴールの右上に決まった。

「・・・・・・あ、あれ?」

 影人は右手を前に突き出したまま、首だけ動かし自分の守っていたゴールを見つめた。ゴールの中にはしっかり闇色のボールが転がっていた。

「ゴール。青チームに1点追加です。そして、ちょうど20分が経過したので、前半戦はここまでとなります。10分の経過の後、後半戦を開始します」

 イズが笛を鳴らしそうアナウンスした。


 ――というわけで、後半戦に続く。

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