第1999話 前髪野郎と光の女神3(2)
「やったったわ! ソレイユ様! イェーイ!」
「イェーイ!」
真夏がアシストをしたソレイユに向かって手を挙げる。ソレイユは自身の手で真夏の手を叩き、ハイタッチをした。
「おお、先制点だ。あの光導姫の子もそうだけど、やっぱりソレイユは運動神経がいいな」
「いいね。どうやら、我がチームのストライカーたちは優秀なようだ」
「会長もソレイユの奴も普通に上手え・・・・・・」
ラルバ、ロゼ、影人が先制点を取った感想を漏らす。なんにせよ、真夏が先制点を決めた事で赤チームには精神的な余裕が出来た。
「ごめん。止めきれなかったよ」
「ううん。仕方ないよ! 香乃宮くんもみんなも頑張ったんだから!」
「そうよ。まだ1点取られただけ。切り替えていきましょう」
光司がゴールからボールを取り出しながら謝罪の言葉を述べる。陽華と明夜は明るい様子で光司を励ました。
「ちっ、ソレイユの奴め。無駄に活発な所は健在か・・・・・・キベリア。責めるわけではないが、お前はもう少し頑張れ」
「え、それ普通に責めてません・・・・・・?」
レイゼロールにそう言われたキベリアは軽く泣きそうになった。
「ふふっ、私の『世界』でサッカーの観戦が出来るなんて贅沢な事ね」
一方、1人で優雅にイスに座りながら試合を観戦していたシェルディアは、満足げな様子でそう呟いた。本当ならば、シェルディアも混ざりたいところだ。だが、いかんせんシェルディアの身体能力はセーブしても高すぎる。シェルディアが混ざれば、サッカーは成立しなくなってしまうのだ。
「キトナも一緒に観れればよかったわね。まあ、夜にでも話してあげましょう」
キトナは残念ながら出かけていた。そのため、このイベントに誘う事は出来なかった。
「赤チームが点を獲得したため、ボールは青チームに渡ります。では、試合を再開します」
イズがピッとホイッスルを鳴らす。陽華はセンターラインに置いたボールを、明夜に向かって蹴った。
「明夜!」
「受け取ったわ陽華! さあ、反撃よ!」
陽華からボールを受け取った明夜がドリブルでボールを運ぶ。そんな明夜を止めようと、真夏が立ち塞がった。
「反撃なんかさせてあげないわよ! さあ、ボールを寄越しなさい名物コンビのバカ担当!」
「誰がバカ担当ですか!? くっ、陽華!」
明夜は反射的にそうツッコミながらも、陽華にボールを戻した。
「うん! 任せて!」
明夜からのパスを受けた陽華は、持ち前の運動神経の良さでぐんぐんと赤チームの陣地に切り込んでいく。
「悪いが行かせるわけにはいかないな」
陽華の行手に赤チームのディフェンダーであるロゼが立つ。ロゼは陽華に対し激しくプレスをかけた。
「くっ!」
「私はサッカーの本場、欧州出身だ。小さい頃は父とよくボールを蹴り合って遊んだものだよ」
ロゼのプレスはすぐに振り切れるようなものではなかった。陽華は何とかロゼにボールを奪われないようにボールをキープした。




