第1997話 前髪野郎と光の女神2(4)
「でもまあ、今はこっちの勝負に集中しましょう! ソレイユ様、ラルバ様! こっちに来て! 円陣組みましょう!」
「あ、はい!」
「え、円陣・・・・・・これは、ソレイユに合法的に触れるチャンス・・・・・・わ、分かった!」
ソレイユとラルバが真夏の近くに寄る。そして、赤チームは円陣を組んだ。
「ソレイユ様! リーダーの役割は譲るわ! 気合いの入る掛け声をお願いします!」
「え!? は、はい。分かりました。・・・・・・コホン。まず、急な呼びかけに集まってくださってありがとうございます。私から言えることは1つだけです。皆さん、勝ちましょう!」
「あいよ」
「おー!」
「お、おー!」
「勝利をこの手に」
真夏に促されたソレイユがチームメイトにそう呼びかける。影人、真夏、ラルバ、ロゼはそれぞれの言葉でソレイユの掛け声に応えた。
「向こうも気合い十分って感じだね! よーし、こっちも円陣組んじゃおう! ほら、明夜、光司くん、レイゼロール、キベリアさん! 組もう組もう!」
「そうね。サッカーはチームスポーツ。連帯感が大事だわ」
「女性と円陣を組むのは少し緊張するけど・・・・・・うん。分かったよ」
「待て。なぜ我がそんな事をしなければ・・・・・・っ、おい。無理やり引っ張るな!」
「嫌よ。そんな暑苦しい事・・・・・・ってちょっと!? 引っ張るのをやめなさいよあんた!」
陽華が青チームに声を掛け、明夜と光司が頷く。レイゼロールとキベリアは嫌がったが、陽華がレイゼロールの手を、明夜がキベリア手をそれぞれ引く。そして、青チームは円陣を組んだ。
「向こうはソレイユ様がリーダーみたいだから、こっちのリーダーはレイゼロールね! じゃあ、レイゼロール! 意気込みをお願いします!」
「なっ・・・・・・!? おいふざけるな。なぜ我がそんな役割をしなければならんのだ・・・・・・!」
レイゼロールは驚いた顔を浮べ、抗議の声を上げた。だが、陽華、明夜、光司、ついでにキベリアも、レイゼロール以外のチームメイトがジッとレイゼロールに視線を向けた。
「・・・・・・ええい! 今回だけだぞ・・・・・・! くだらんが勝負は勝負だ。しかも、相手はソレイユに影人だ。もし負ければ、間違いなくいらん事を言ってくるに決まっている。お前たちも奴らに侮辱されたくはないだろう。負けは許されん。各自、全力を尽くせ」
「おー! 絶対勝とう!」
「やったりましょう」
「ええ」
「おー・・・・・・」
最終的に折れたレイゼロールが青チームにそう言葉を掛ける。陽華、明夜、光司、キベリアはそれぞれリーダーであるレイゼロールの言葉に応えた。ちなみに、キーパーは光司が務める事となり、光司はゴール前に陣取った。
「ふむ。両チーム準備は出来たようですね」
審判であるイズが両チームを見渡す。赤チームはキーパーに影人、ディフェンスにロゼとラルバ、オフェンスにソレイユと真夏という配置だ。攻守バランスの取れたフォーメーションといえるだろう。
対して、青チームはキーパーに光司、ディフェンスにキベリア、オフェンスにレイゼロール、陽華、明夜という配置だ。攻撃陣が3人という、オフェンス寄りの攻撃的なフォーメーションだった。
「最後に先攻、後攻を決めます。今からコイントスを行いますので、両チームのリーダーは裏か表か言ってください。当てた方を先攻とします」
「では表で」
「なら裏だ」
赤チームのリーダーであるソレイユと、青チームのリーダーであるレイゼロールがイズにそう告げる。イズはシェルディアから渡されていた古びたコインを右手で弾いた。コインが宙を舞い、イズの右手の甲に落ちる。
「・・・・・・表です。先攻は赤チームとなります」
コインを見たイズがそう告げる。イズの宣告を聞いたソレイユは「よし!」とグッと手を握った。
「先攻はいただきますよレール。初得点はいただきます」
「ふん言っていろ。逆にこちらが先制点を取ってやる」
チームのリーダーであるソレイユとレイゼロールが最後にそう言葉を交わす。
「では始めます」
イズが試合開始のホイッスルを鳴らす。そして、シェルディアの『世界』の下、小さなサッカー大会が始まった。




