第1994話 前髪野郎と光の女神2(1)
「よう嬢ちゃん。こんにちはだ。嬢ちゃんも散歩してたんだな」
「こんにちは。シェルディア」
散歩中にバッタリとシェルディアと出会った影人とソレイユは、シェルディアに挨拶の言葉を返した。
「ええ。ここは私のお気に入りの散歩コースだから。それにしても・・・・・・あなたたち2人だけで地上にいるというのは、中々に珍しいわね」
シェルディアが言葉通り珍しそうな表情になる。影人とソレイユの関係はシェルディアもよく知るところだが、ソレイユは基本的には地上に降りてこない。ソレイユには光の女神としての役割があるからだ。シェルディアの言葉の意味を理解したソレイユは、「実は・・・・・・」とシェルディアに自分が地上にいる理由を話した。
「へえ、影人がね。ふーん、そう。あなたをデートに誘ったの。やるじゃない影人。女神をデートに誘うなんて」
「いや、デートとかじゃなくてただ遊びに誘っただけなんだが・・・・・・というか、嬢ちゃん何を怒ってるんだ? その、めちゃくちゃ恐いんだが・・・・・・」
シェルディアはニコニコと笑っているが、纏う雰囲気は表情とは全く別のものだった。影人はシェルディアから凄まじい圧のようなものを感じた。
「別に何も怒っていないわ。ただ、後日荷物持ちに付き合ってね影人」
「絶対怒ってるじゃん・・・・・・」
しかし、影人にはシェルディアが怒っている理由が全く分からない。影人がこの世の不思議を感じていると、ソレイユがシェルディアにこう言葉をかけた。
「まあまあ、シェルディア。羨ましい気持ちは分かりますが、落ち着いてください」
「あら心外ね。別に羨ましいだなんて思っていないわ。だって、私は影人の隣に住んでいるんですもの。いつでも、影人とデート出来るわ。勘違いがちょっと見苦しいわよソレイユ」
「っ・・・・・・そ、そうですか。それは失礼しました。でも、私と影人は心で繋がっていますから。あなたが影人の隣に住んでいたとしても、私の方が近しい存在ですよ」
「正確には、あなたの神力を通じて繋がっているんでしょう。果たして、それが心で繋がっているという事になるのかしら。本当に大事なものは、積み重ねた絆よ。長く生きているくせにそんな事も分からないなんて・・・・・・可哀想に。経験が足りないのね」
「私には光の女神としての役目がありましたからね。享楽的に生きてきたあなたとは違うんですよ。ふふふふふふふっ」
「言ってくれるわね。ふふふふふふふっ」
(こ、恐え・・・・・・)
ソレイユとシェルディアの間に、目には見えない火花がバチバチと散る。影人はソレイユとシェルディアの背後に修羅の姿を幻視し、心の中でそう言葉を漏らした。
「まあいいわ。この話はこのくらいにしておきましょう。それより、外で遊ぶ方法を探しているのよね?」
「あ、ああまあ・・・・・・」
「だったら、いい方法があるわ。あと、外で遊ぶなら人数がいた方が楽しいわ。そうね。影人、あなたもいくらか人数を集めてちょうだい。せっかくなら存分に楽しみましょう」
「ちょ、ちょっと待ってくれ嬢ちゃん。人数を集めろって・・・・・・いったい何をするつもりなんだ?」
話が見えないといった様子で影人がシェルディアにそう尋ねる。シェルディアはイタズラっぽく笑うとこう答えた。
「楽しい事よ。たまにはみんなでスポーツでもしましょう」




