第1981話 前髪野郎と闇の兄妹2(1)
「いやー、しかし現世は暑いね。昔はこんなに暑くなかったと思うけど・・・・・・冥界の地の国の焦熱階層のようだよ」
数分後。影人たちは適当にブラブラと周囲を歩いていた。レゼルニウスはローブの裾で額の汗を拭うと、アイスブルーの目を細め、灼熱の太陽輝く空を見上げた。
「・・・・・・まあ夏だからな。にしても、暑すぎるがな。というか、お前地上で神力使えるんだろ。だったら、体温調節の力を使えよ。それか、さっきのレイゼロールみたく冷却の力を使うとか」
「まあ、そうなんだけどさ。でも、僕は現世をそのまま感じたいんだ。現世の今の自然をそのまま感じられるなんて・・・・・・素敵で幸せな事だからね」
影人の提案に、しかしレゼルニウスはかぶりを振った。レゼルニウスの言わんとしている事を察した影人は「・・・・・・そうかよ」とただ一言呟いた。
「で、ブラブラとどこに向かって歩いてるんだこれ。この炎天下の中、目的もなく歩き続けるのは拷問なんだが・・・・・・」
「・・・・・・そんな事、我に聞かれても知らん。適当に回ろうと言い出したのは兄さんだ。兄さんに聞け」
「・・・・・・だってよ、レゼルニウス」
レイゼロールにそう言われた影人は、レゼルニウスにそう振った。レゼルニウスは「うーん、そうだね・・・・・・」と少し悩んだ様子になった。
「あ、じゃあせっかくだから、影人くんとレールが戦った場所、まあ必ずしも戦った場所じゃなくてもいいんだけどね。影人くんとレールの縁がある場所を見たいな。そうだね。例えるなら、映画に出て来た場所を巡ってみたいって感じかな。違う言い方をすれば・・・・・・ああ、そうそう。いわゆる聖地巡礼だよ」
そして、レゼルニウスは思いついたといった感じで、影人とレイゼロールにそう告げた。
「聖地巡礼・・・・・・? いや、言わんとする事は分かるが・・・・・・何か、お前変わってるな」
「そうかな? 実際に戦った2人に案内してもらう事ほど贅沢な事はないと思うけど」
影人の感想に対しレゼルニウスは笑みを浮かべる。レゼルニウスは光司かそれ以上のイケメンなので、その笑みは極上のイケメンスマイルだった。
「けっ、イケメン族め。で、どうするんだレイゼロール。レゼルニウスはこう言ってるが」
「・・・・・・兄さんがそうしたいというならそれでいいだろう」
影人はレゼルニウスに対し軽く嫌味を言いながらも、レイゼロールに確認を取った。レイゼロールはレゼルニウスの意見に反対しなかった。
「じゃあ、そうするか。でも、俺とレイゼロールが戦った場所は海外も含まれるぞ。そこはどうするんだ?」
「転移を使えばいい。ただ、長距離間の転移は我もそれなりの力を使う。それが何度もとなれば尚更だ。だから、我が途中で力が枯渇しそうになったら転移はお前がしろ。お前も長距離間の転移は出来るようになったのだろう」
「まあな。取り敢えず了解だ。で、最初はどこから行くんだ?」
影人がレゼルニウスに意見を求める。レゼルニウスは「それは決まってるよ」と言って、こう言葉を続けた。
「影人くんがスプリガンとして・・・・・・初めてレールに相見した場所さ」




