第1973話 夏だ、祭りだ、ハチャメチャだ8(3)
『あ、あのー、すみませんがそちらの方たちは・・・・・・? それと、オリジナル曲と仰っていましたが、この大会はそういった趣旨の大会ではなくてですね・・・・・・それに、音源も・・・・・・』
「大丈夫だ。心配には及ばないぜ」
「ああ。こんな事もあろうかと、楽器は常に用意していたからな」
「練習も実は陰でバッチリやっていた」
「今や俺たちの楽器捌きはかなりものだぜ」
「ふっ、遂に披露する時が来たな」
「さあ、G。マイクを握ってくれ。歌詞は覚えてる、いや、もう俺たちの魂を通じて理解ってるだろ。準備はいつでもいいぜ」
言葉通り、どこからかベースやギター、携帯式のドラム、携帯式のピアノなどを持ち出してきたA、B、C、D、E、Fの6人のバカどもがフッと笑う。いったいどこの亜空間から取り出したのかと、声を大にして突っ込みたいが、無法バカモードのこいつらに何を言っても無駄である。どうせ、「何か気合いで出てきた」とか物理法則やらを無視しまくった言葉が出てくるに違いない。これぞバカパワー。終わりである。
「ああ。さあ・・・・・・ショータイムといこうぜ!」
前髪野郎が進行役の男性からマイクをひったくるように奪う。それと同時に、AとBはベースを鳴らし、CとDはギターを弾き、Eはドラムを叩き始め、Fはピアノの鍵盤を押し始める。それらが共鳴し、曲のイントロを奏で始める。
『皆さん、聞いて下さい。俺たちで「セブンス・バック・ヴァレット」――』
ボーカルである前髪ことGは観客たちに曲名を告げると、高らかに歌い始めた。
曲名 セブンス・バック・ヴァレット
歌 G
作詞 A、B、C、D、E、F
作曲 B
歌詞
俺たちは7つの弾丸 いつだって一緒の標的を狙って撃ち抜くぜ
どんな困難も俺たちなら乗り越えられる
HEY HEY あんたはもう撃たれてるぜ
俺たちは別々の道を歩んでいた そう途中までは
だけど突然交差した俺たちの道 NOW
魂で繋がった俺たちは さながら7つの弾丸
7つ集まれば世界だって WOW きっと WOW
撃ち抜いてみせるぜ 無敵で最強!
俺たちは7つの弾丸 いつだって一緒の標的を狙って撃ち抜くぜ
どんな困難も俺たちなら乗り越えられる
HEY HEY あんたはもう撃たれてるぜ
撃たれたらお前も仲間 仲良くやろうぜ
セブンス・バック・ヴァレット! 君も今日から弾丸さ
どこまでも突き進んで撃ち抜いていけ!
セブンス・バック・ヴァレット! 俺たちは永遠さ
〜2番は考え中〜
『――聞いてくれてありがとう。感謝するぜ』
気分が最高潮にまで盛り上がっていたのだろう。アホの前髪は天に人差し指を掲げていた。バカ前髪は満足そうな顔で観客にそう告げた。
「・・・・・・何よこれ?」
「うーん、正直上手くも下手でもなかったわね・・・・・・微妙っていうか・・・・・・」
「歌詞も音楽もちょっとアレかな・・・・・・」
「あのバカ・・・・・・本当にバカなんだな」
「・・・・・・まあ、心は込もっていたな」
「う、うん。私は好きだなー・・・・・・」
「ま、まあ・・・・・・うんって感じね・・・・・・」
「わ、わあ・・・・・・」
「・・・・・・あんな男に裁かれたのですから、製作者が浮かばれませんね」
「ふふっ、あの子はいつでも楽しそうね」
「中々に良い余興じゃったの」
「影人さん、いいお歌でしたよ!」
「ふむ。歌う事もまた芸術活動だ」
「うむ。漢を見たであります。見事であります、帰城殿」
「帰城くん、いい歌だったよ」
「! (わあ! パチパチ!)」
前髪野郎と6バカどもの渾身の曲を聞いた、キベリア、真夏、ソニア、暁理、アイティレ、陽華、明夜、風音、イズ、シェルディア、白麗、キトナ、ロゼ、芝居、光司、ぬいぐるみはそれぞれの反応を示した。一部の者たちを除き、基本的には当然というべきか微妙や呆れといった反応だった。そして、それは観客たちも同じようで、特に女性は「どうすんのこの空気」的な顔を浮かべている者たちが大半だった。




