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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
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第197話 対面(5)

「お前が生まれた理由には驚かされたし、俺の本質がどうのこうのとかいった話はよく分からんかったが、俺がここに来たのはそういったことを聞くためじゃねえ。無駄だとは言わない。俺からすればたぶん貴重な話を聞かせてもらったし、お前と話せたのはいい経験になったよ。――で、ここからが本題だ。俺はお前と話し合うため、つまり交渉するためにここに来た」

「交渉だぁ?」

「ああ」

 悪意が自分に胡散臭そうな目を向けてくる。影人は悪意の言葉に短く答えると、集中するために息を吐いた。

 影人がこの精神世界に来たのは悪意と話し合うため。それは嘘ではない、ただ影人が悪意と何のことを話し合いたいのかまでは、影人は悪意に伝えていなかった。

「このままお前のことを放っておけば、俺は仕事に支障をきたす。当然だな、いつお前に体を乗っ取られて、暴走するようなリスクのある奴が『スプリガン』の仕事なんて出来るはずがねえ。スプリガンの仕事は、その正体不明という事実を以て、1人で暗躍すること。が、実際は光導姫・・・・・・・あと守護者もか、が危険になればそれとなく助けることだ。だっつうのに、お前に体を乗っ取られた俺はレイゼロール戦の時、無差別攻撃をしちまった。下手をすれば、あの2人は・・・・・・・光導姫と守護者は死んでた」

 レイゼロール戦の時、目の前の悪意に体を乗っ取られた時のことを思い出しながら、影人はそう語った。あの時だけは本当に危なかった。ソレイユの転移がなければ、陽華と明夜、フードの光導姫と守護者は死んでいた可能性があった。

「お前に体を乗っ取られた2回目と3回目の記憶は俺にはない。だが、いつお前が気まぐれから光導姫と守護者を攻撃するか、()()か分からん。そんなことになれば本末転倒もいいとこだ。・・・・・・・・悪意、お前の望みは何だ? なぜ俺に干渉してきた?」

 影人は静かにそう問うた。ここに来る前、影人は悪意に反撃すると言った。その言葉にも嘘はない。ただ、悪意が思いのほか話せる相手だったので影人は交渉という手段を優先した。

(つまりは使い分けだな。俺の勝利条件は、悪意を何とかすること。その為の手段は実際のところは何でもいい。力づくだろうが、話し合いでもな。だが、話し合いに応じたなら交渉できる可能性がある。なら力づくよりも交渉の方が楽だ)

 何度も言うが、影人の言葉に嘘はない。悪意に反撃する力づくの方法も必要なら取るし、ここに来た本題も悪意と話し合う為、交渉するためでもある。

 だが、結局のところそれらは()()()。影人は目的を達成するためなら、その()()()()()()()()()いくらでも変える。その結果が何をもたらすか。答えは簡単。悪意には自分は「わざわざ交渉と話し合いのためにここに来た、平和主義者。または甘ちゃんな人間」と思われているはずだ。

 それは影人にとって好都合。必然、悪意は影人を舐める。そこには多少の油断が生じるかもしれないし、もしかしたら交渉にも応じてくれるかもしれない。まあ交渉に応じる確率はそんなに高くないと影人は思っているが。

(さあ、乗ってくるか?)

 まるで詐欺師のように、内心と表情や態度などを分離させ、影人は悪意の答えを待った。

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