第1966話 夏だ、祭りだ、ハチャメチャだ7(1)
「帰城くん? それに、香乃宮くんに他のみんなも・・・・・・え、みんなでお祭り回ってる感じ!?」
「しかも、この出店を出してるのしえらさんだわ・・・・・・まさか、みんなでお祭りを回るのに私たちだけハブられたって事・・・・・・!?」
「・・・・・・真祖が3人に『破絶の天狐』までいますか。色々と凄まじいですね」
影人たちに気がついた陽華、明夜、イズがそれぞれの反応を示す。影人は不愉快な勘違い(あくまで自分にとって)をしている陽華と明夜に対して反論した。
「勘違いするな。俺は巻き込まれただけだ。考えてもみろ。孤独で孤高な俺が素直にこの集団といると思うか? いいや、あり得ないね。あ、ちょ、嬢ちゃん。いま決めてるところだから、そんな不満そうな目で睨まないでくれよ。分かった分かった。嬢ちゃんは別だから!」
いつも通り無駄に格好をつけようとした前髪野郎だったが、シェルディアの無言の抗議を受け、最後はシェルディアに向かって取り繕っていた。何とも情けない生物である。
「うーん・・・・・・確かに、あの1人大好き侍の帰城くんが素直にみんなと一緒にいるのは不自然ね」
「だよね。帰城くんなら一目散に逃げてるはずだし・・・・・・」
「そうですね。帰城影人の行動原理から外れているように思います」
明夜、陽華、イズは何の疑いもなく影人の言い分を信じた。信頼性の方向がおかしい気もするが、前髪野郎は、捻くれ捻くれツイスト野郎なので、その信頼の方向で逆に合っていた。
「朝宮さん、月下さん、フィズフェールさん、こんばんは。実はね――」
3人に対して爽やかイケメンスマイルを向けながら、光司は事情を説明した。
「な、なるほど。香乃宮くんが帰城くんと一緒にお祭りを回りたいがために勝負をふっかけて、帰城くんがそれを買ったと・・・・・・」
「それで勝負をしている内に顔見知りが増えていって現在の状況になっていると・・・・・・」
「・・・・・・あなたもよく分からない人間ですね、香乃宮光司。帰城影人と共に祭りを回りたいとは。ですが、それを言うならあなたの目的は既に・・・・・・」
陽華、明夜が状況を飲み込もうとしている中、イズが何か気づいた事を述べようとする。だが、光司はスッと自分の口元に人差し指を近づけた。
「おっと、フィズフェールさん。申し訳ないけど、それ以上は言わないでくれるかな。それは無粋というものだからね」
「っ?」
「・・・・・・なるほど。分かりました」
光司の言葉に首を傾げた影人を見たイズは、全てを察したようにコクリと首を縦に振った。
「ねえ明夜、イズちゃん」
「言いたい事は分かってるわ陽華。もちろん、私はOKよ。というか、こんな楽しそうなイベント見逃せないわ」
「私も陽華が何を言おうとしているのか予想できます。構いませんよ。まあ、帰城影人がいるのはあれですが」
「ありがとう2人とも! ねえ、香乃宮くん。よければ、私たちも一緒に着いて行ってもいいかな? みんなとお祭りを回るのは、とっても楽しいだろうから!」
明夜とイズに確認を取った陽華が光司にそう聞く。光司は笑顔で頷いた。
「もちろんだよ。朝宮さんたちが加わってくれたら、更に賑やかになるよ」
「おい香乃宮。何を勝手に決めてるんだ。これ以上増やすな。それに、朝宮と月下は特にうるさ――」
「ちょっと黙りなよ君」
「お黙りだよ。影くん」
「いいじゃない影人。そっちの方が楽しいわ」
影人が異議ありといった様子で声を上げるが、暁理、ソニア、シェルディアが影人の言葉を封じに掛かる。3人からそう言われた影人は「ぐっ・・・・・・」と言葉を飲み込む。これ以上は何を言っても無駄だと悟ったのだ。
「というわけで、皆さんこれからよろしくお願いします!」
「一緒に祭りを楽しみましょう」
「・・・・・・よろしく頼みます」
陽華、明夜、イズが一行に挨拶をする。影人とキベリア以外の者たちは喜んで3人を受け入れた。
「ちくしょう・・・・やっぱりこうなるのかよ・・・・・・」
そして、影人はガクリと肩を落とした。
――こうして、陽華、明夜、イズも一行に加わった。




