第1960話 夏だ、祭りだ、ハチャメチャだ5(3)
「えー、あんた達も合流するの。嫌だわー・・・・・・」
「私を前にして正直にそう言えるのは大したことだわ。それより、最後の勝負の方法はもう決めたの? 最後の勝負はあなたや私たちが決めるのでしょう」
真夏にそう言葉を返しながら、シェルディアは影人と光司以外の者たちにそう聞いた。
「いや、まだだよ」
「・・・・・・私は今日初めて日本の祭りに来たからな。他にどのような遊戯があるのか分からない」
「でも、後残っているお祭りの遊びは限られてるから、その中から何か選ぶ形になると思う・・・・・・かな」
ロゼ、アイティレ、風音がシェルディアの問いに答える。3人の答えを聞いたシェルディアは「そう」と呟くとこう言葉を続けた。
「なら、適当に屋台を巡って遊戯を決めましょう。それまでは・・・・・・ふふっ、えい」
シェルディアは悪戯っぽい笑みを浮かべると、影人の右腕に抱きついて来た。
「っ!? じょ、嬢ちゃん!? 急にどうしたんだよ・・・・・・!?」
右腕全体に感じる仄かな温かさと柔らかい感触に影人は慌てふためいた。ドキドキと心臓が早鐘を打ち始め、恐らくシェルディアからだろう、何だかいい匂いが影人の鼻腔をくすぐった。
「せっかくオシャレしたんですもの。少しでもデート気分を味わいたいでしょ。元々、今日私はあなたとお祭りを巡りたかったのだから、これくらいは許してもらわないと困るわ。あと、言うのが遅れたけどその格好似合っているわよ影人。格好いいわ」
「そ、そいつはどうも・・・・・・って、そうじゃなくて! は、離れてくれよ。こんな所でくっつかれたら・・・・・・その、色々と勘違いされるから」
「あら、それはどんな勘違いかしら。別にいいじゃない。勘違いさせておけば。それと、まだ今日の私の服装の感想を聞いていないのだけれど」
赤面する影人にシェルディアが妖しく微笑む。影人はいつもより数段引き立っているシェルディアの妖艶さにドギマギとした。
「に、似合ってる! 凄く似合ってるから! 本当に綺麗だ!」
「あら、ありがとう。凄く嬉しいわ。ふふっ、じゃあ屋台を探しましょうか」
シェルディアは目に見えて上機嫌になると、影人の右腕を引いて歩き始めた。シェルディアの力に通常のモヤシ前髪が敵うはずもない。前髪野郎は「ちょ嬢ちゃん!?」と声を上げ、シェルディアに半ば引きずられて行った。
「・・・・・・何と。帰城殿はあの見た目であってもモテるのでありますな。あれほど凄まじい美少女に腕を組まれるとは・・・・・・いやはや、人は見た目によらないとは正にこの事。あれが伝説のギャルゲー、もしくはラノベ主人公でありますか。これは、もしかしたら自分も危ないかもしれないでありますな・・・・・・」
「いったい何を言ってるの芝居・・・・・・? でも、やっぱりシェルディアさんは帰城くんの事が・・・・・・」
「うーん、あんな化け物に好かれてる帰城くんに同意するわ。ああ、でも帰城くんも化け物みたいなものか。なら、化け物同士お似合いだわ!」
「それは2人に失礼ですよ。榊原先輩」
「ふーむ・・・・・・やはり、彼女が1番のライバルといったところかな。私も負けてられないな」
「っ、『芸術家』お前まさか・・・・・・」
「きゃー、シェルディアさん大胆です! よし、今度は私も・・・・・・!」
「本当、不思議だわ。シェルディア様は何であんなゲテモノと・・・・・・」
「! (ご主人様嬉しそう! 僕も嬉しい!)」
その光景を見ていた芝居、風音、真夏、光司、ロゼ、アイティレ、キトナ、キベリア、ぬいぐるみがそんな反応を見せる。いつの間にか結構な大所帯になった一行は、影人と光司の最後の勝負を決める遊戯を求めて祭り会場を歩いた。




