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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1959/2051

第1959話 夏だ、祭りだ、ハチャメチャだ5(2)

「っ、キトナさん。その、耳を出してて大丈夫なのか?」

 影人は自分の正体を恐らく知らないであろう芝居の目を気にして、キトナの方に近づくとヒソヒソとした声でそう聞いた。だが、その質問に答えたのはキトナではなくキベリアだった。

「大丈夫よ。今日は祭り。一般人はキトナの事をテンションが上がって何かのコスプレをしてる人間くらいにしか思っていないはずよ。近くに来て、実際に触られでもしない限りバレないわ」

「確かにそうか・・・・・・」

 キベリアの説明を聞いた影人は納得するようにそう呟いた。普通の人間は地元の祭りの中に異世界から来た獣人がいるなどとは考えない。ほとんどの者はキベリアが言ったように思う事だろう。

「む? これまた凄まじい美人・美少女たちが。しかも、1人はケモ耳のコスプレ。いい。実にいいでありますな」

 実際、芝居は見事に騙されていた。コメントがおっさんのようなものなのは少し気になったが。

「げっ、吸血鬼」

「っ・・・・・・」

「・・・・・・こんな所で会うものなのね」

「こんばんは、シェルディアさん」

 シェルディアの正体を知っている真夏、アイティレ、風音、光司はそれぞれそんな反応を示した。真夏は今のキベリアと同様に露骨に嫌な顔を、アイティレ、風音、真夏はいずれも少し緊張している様子だった。無理もない。この場にいる芝居以外の光導姫、守護者たちは何度かシェルディアと共闘した事はあるが、元々シェルディアは闇サイド。加えて、尋常ならざる実力者だ。今は敵ではないとは分かっているが、その気になれば、国すらも崩壊させるような力を持つ者に対する畏れはそう易々とは取れなかった。

「ええ。あなた達もこんばんは。影人、あなたの言っていた先約とはこの子たちの事だったのね。少し意外だったわ」

「いや違うんだよ。実は・・・・・・」

 影人は先ほどロゼと真夏に話したのと同じ話をシェルディアたちに聞かせた。

「あらそうだったの。ふふっ、相変わらず面白い事に巻き込まれているわね。さすがだわ」

「何がさすがなんだ・・・・・・? 俺からすればいい迷惑だよ。俺はただあいつらと祭りを楽しみたいだけなのに・・・・・・」

「自然と面白い事が寄ってくる。それは一種の才能よ。それも類い稀なるね」

「・・・・・・心の底からいらないよ。そんな才能は」

 影人が項垂れながらそう呟く。そんな影人を見たシェルディアは「ふふっ、諦めなさいな。生とはそういうものよ」と楽しそうに笑った。

「せっかくだから、私たちもその勝負を見学させてもらうわ。キトナもいいわよね?」

「はい。もちろん! とっても面白そうですわ」

「! (僕もそう思う!)」

「決まりね。じゃあ影人たちに着いて行きましょうか」

 キトナとキベリアに抱えられていたぬいぐるみの同意を得たシェルディアが頷く。しかし、キベリアは「え!?」と声を漏らす。

「シェルディア様、あの、私は着いていくかどうか聞かれていないんですけど・・・・・・」

「あなたの意見は聞く必要がないもの。ほら、黙って着いてきなさい穀潰し」

「酷い!? というか、穀潰しは言い過ぎですよ! 心が抉られるんでやめてください!」

「事実でしょう。なら、今風の言い方に直してあげましょうか。うるさいわよニート」

「あなたに心はないんですか!?」

 再びキベリアが悲鳴を上げる。今日もシェルディアとキベリアの漫才は絶好調だった。まあ、キベリア本人は「ううっ、私はニートじゃない・・・・・・私は誇り高き魔女なのよ・・・・・・」と半べそをかいていたので、漫才とは絶対に思っていないだろうが。

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