第1953話 夏だ、祭りだ、ハチャメチャだ4(1)
「勝負は3本勝負でどうかな。まず僕が勝負する遊戯を決めて、次に帰城くんが遊戯を決める。最後の勝負は連華寺さんたちに決めてもらう・・・・・・これで公平になると思うけどいいかな?」
「いいぜ、と言いたいところだが、お前があいつらを買収していない可能性はゼロじゃないよな? その場合俺が不公平になる。まずはあいつらが完全にシロだって証明しろ」
光司の提案を受けた影人が前髪の下の目を風音たちに向ける。その言葉を受けた光司は「なるほど。確かにそうだね。さすがは帰城くんだ」と頷いた。
「連華寺さん、フィルガラルガさん、新品さん。実は僕と帰城くんは今から屋台を巡って勝負をするんだけど、少しだけ僕たちに付き合ってもらえないかな。第三者の存在が欲しいんだ」
「え? 私は別にいいけど・・・・・・2人はどう?」
「・・・・・・私も構わない」
「何だか香乃宮さまの様子が普段と違う気がするでありますな・・・・・・ですが、見方によっては中々に面白くなってきたであります。見学してもよいというなら、私は見学したいでありますな」
急にそんな頼み事をされた風音は驚きながらもアイティレと芝居に意見を求めた。アイティレと芝居も拒否の意思は示さなかった。
「ありがとう。恩に着るよ。さて、帰城くん。君なら今の3人の反応が嘘ではないと分かると思うけど・・・・・・どうかな?」
光司は風音、アイティレ、芝居に感謝の笑みを向けると影人の方に顔を戻した。光司が提示した証拠は3人の今の反応だった。
「・・・・・・確かに嘘をついたり芝居はしてねえな。分かった。信用してやる」
スプリガンの経験で無駄に観察眼が鋭い前髪野郎がそう呟く。光司は「決まりだね」と小さく笑った。
「じゃあ、最初は僕が勝負を決めさせてもらうよ。少し移動しようか。見える範囲では、僕がやりたい遊戯は見えないから」
光司はそう言うと歩き始めた。影人が光司の後に続く。そして、影人の後に風音、アイティレ、芝居が続いた。
「ああ、あった。帰城くん、最初の勝負はこれで頼むよ」
影人たちが人混みの中を進んで行くと、光司がとある出店の前で足を止めた。
「ここは・・・・・・水風船、もといヨーヨーすくいか」
影人の視線の先には、大きな桶に色とりどりの小さな風船が水に浮いており、その風船をヨーヨー釣り用のこよりで取ろうとしている子供たちの姿があった。影人の言葉に光司は頷いた。
「うん。子供の時に何度かお祭りに連れて行ってもらった事があるんだけど、これは特に得意だったんだ。やるのは久しぶりだけど、腕はそんなに衰えてはいないはずだよ」
「はっ、舐められたものだぜ。どうやら、お前は俺の2つ名を知らないらしいな。『ヨーヨー釣りの魔術師』・・・・・・見せてやるよ。俺の華麗な釣りをな」
魔術師(笑)はクールを気取りながら店の方へと近づいた。光司も影人と一緒に店の方へと歩き始める。
「おっちゃん。1回頼む」
「ヨーヨー釣りを1回お願いします」
「ん。400円」
店主の老齢の男性が影人と光司に手を向ける。影人はピッタリ400円を、光司は1000円を店主の掌に乗せた。老齢の店主は受け取った金をプラスチックのケースに入れると、光司に600円の釣り銭を渡した。
「ほれ、頑張れよ」
店主の男性が影人と光司に、ヨーヨー釣りの釣り針と取ったヨーヨーを入れるための器を渡す。
「負けないよ帰城くん」
「それはこっちのセリフだ」
ヨーヨーを釣るための装備を手に入れた光司と影人は、ヨーヨーが浮かんでいる桶の前にしゃがんだ。




