第1951話 夏だ、祭りだ、ハチャメチャだ3(3)
「あんたは・・・・・・確か『巫女』・・・・・・いや、連華寺さんか。それと・・・・・・フィルガラルガさん。そっちの人は初対面・・・・・・だよな?」
芝居が光導姫かどうか分からなかった影人は、風音とアイティレを苗字で呼んだ。芝居を見て首を傾げた影人に対し、芝居は「はい。初対面であります」と答えを返した。
「おーいG。フランクフルトは買えた・・・・・・って女子!?」
「しかも全員凄え美人だ・・・・・・Gの知り合いか?」
焼きそばを買い終え、影人の元に来たAとDは風音たちを見て、驚いたように目を見開いた。
「知り合い・・・・・・っていえば知り合いだな。でも、顔見知り程度だ」
影人はAとDに対してそう言葉を述べた。正確には芝居以外の2人とは、顔見知りよりかはもう少しだけ深い仲(戦ったり敵対したりする事をそう形容するなら)かもしれないが、バカ正直にその事をAとDに教えられるはずもなかった。
ちなみに、その会話を聞いていた風音は「G?」、アイティレは「なにかのコードネームか・・・・・・?」、芝居は「うーむ。明らかにGという顔ではないでありますが・・・・・・」と一様に頭にクエスチョンマークを浮かべていた。まあ当然である。これが一般人の反応だ。
「まあ、あんたらも祭りを楽しめよ。じゃあな」
特に3人に対して興味もなかった影人は風音、アイティレ、芝居に即座に別れの挨拶を告げた。さすがは前髪野郎。着飾った女子に対しても安定の塩対応である。お前のような見た目陰キャレベル100みたいな奴が塩対応なんか出来る立場か。いや違う。存在している事が勘違いみたいな奴は宇宙の藻屑になってほしい。
「っ? A、D?」
だが、ここで意外な事態が発生した。つい先ほどまですぐそこにいたAとDの姿が消えたのだ。まさか人混みに流されたか。影人は最初にそんな事を考えた。
「ご友人なら影のようにスッとどこかへ消えたでありますよ。まるで忍者みたいでありました」
だが、芝居が影人にそう教えてくれた。という事は、2人は意図的に影人の前から姿を消した事になる。
(な、なぜだ・・・・・・A、D・・・・・・! なぜ俺を・・・・・・俺たちは仲間のはずだろ!?)
2人に置いていかれた事を悟った前髪は「ぐおぉぉぉぉぉぉぉっ・・・・・・」と呻き声を漏らし、膝から崩れ落ちた。横切る人々はフランクフルトを持ちながら膝から崩れ落ちる、凄まじく前髪の長い男に奇異の視線を向けた。
「・・・・・・今会ったばかりの人にこう言うのもあれでありますが、見た目の割に中々愉快なお人でありますな」
「ど、どうしたの帰城くん? 大丈夫?」
「・・・・・・」
芝居は軽く引いたような顔を、風音は心配した様子に、アイティレは何だか可哀想なモノを見る目を影人に向けた。だが、当の本人は女子たちの反応などを気にしている場合ではなかった。
(いや、あいつらが俺を裏切るはずがない。俺を置いて行ったのには何か理由があるはずだ。感じろ。感じるんだ。あいつらの真意を・・・・・・!)
影人は深く、深く集中した。影人とAとDは魂で繋がった存在。ならば、魂を通して2人の真意を読み取れるはずだ。影人はAとDの事を強く念じた。
(っ、来た・・・・・・!)
するといかなる奇跡か、影人はここから50メートルほど離れた場所にAとDの気配を感じた。次の瞬間、影人の中に2人の想いが入って来る。
『頑張れよG。せっかくの祭り。女子と仲良くなるにはうってつけだ。幸運を祈ってるぜ』
『友のために邪魔者は去るぜ。G、恋の花火を咲かせてやれ』
AとDの真意を理解した影人はハッと前髪の下の両目を見開いた。




