第1949話 夏だ、祭りだ、ハチャメチャだ3(1)
「ふっ、遂に到着したな。今宵の熱き夜の現場に」
祭り会場に着いたBはクイっとメガネのブリッジを右手で上げる。他の者たちも祭りの熱気に当てられたように、テンションが高い様子になる。
「フー! 年に1度の祭りだぜ! イカ焼きたこ焼き焼きそばかき氷! その他諸々! 今日は食い倒れるぜ!」
「やべー。会場に着いたらめっちゃワクワクしてきた。遊び尽くすぜ!」
「おおっ、浴衣姿の女子が沢山! いやー、眼福眼福。誰か1人でもいいからお近づきになりたいぜ! いや、マジで!」
「ヤーハー! 思考なんていらねえ! 今日はたた感じるのみ!」
「やるなら今しかねーZU◯A! やるなら今しかねーZ◯RA! 攘夷がJ◯Y! JO◯が攘夷!」
「月に叢雲花に風・・・・・・みたいな事は今日はなしで頼むぜ。ふっ。遂に『祭りの遊◯王』と呼ばれた俺の実力を発揮する時が来たみたいだな」
A、C、D、E、F、Gが見るからにはしゃぐ。だが、今日は夏祭り。それだけはしゃげば、普段ならば間違いなく浮いているところだが、気にする者は誰1人いなかった。
「よーし、諸君。まずは花火を見る場所、もといベースキャンプを確保するぞ。花火が上がる時間は8時半。それまでに場所を確保してそこを拠点に祭りを楽しもう。何か意見はあるか?」
Bが一同にそう問う。だが、一同は意見はないと皆かぶりを振った。
「オーライだ。では場所を探すぞ。動け!」
「「「「「「イエッサー!」」」」」」
アホどもは急に米軍のようなノリになると、サッと小走りで会場の中を回り始めた。
「うん。いいな。ここは穴場っぽいぜ」
約20分後。A、B、C、D、E、F、Gは会場から少し離れた木の暗がりにいた。Aはこの場所を気に入ったようにウンウンと頷いた。
「そうだな。ここからでも花火はよく見えそうだし・・・・・・よし。ここにしようぜ」
「賛成。よし、ならレジャーシート引くぜ。おいEそっちの端持ってくれ。FとGは重石になりそうなやつを見つけてきてくれ」
CがAの言葉に同意し、Dが持っていた手提げの紙袋の中から青いレジャーシートを取り出す。DはE、F、Gにそう指示を飛ばした。Dにそう言われた3人は「おう」「了解」「あいよ」と返事をすると、素直にDの言葉に従った。
「よし、ベースキャンプはこんなもんでいいだろ」
数分後。Dが満足そうな顔でそう呟く。青いレジャーシートの四隅にはその辺りに転がっていた小石を乗せた。これで強風でない限り、レジャーシートが風で飛ばされる事はないはずだ。
「ありがとうみんな。では、そろそろお楽しみと行こう。みんな金は持ったか?」
「「「「「「おう!」」」」」」
「気合いは十分か?」
「「「「「「おう!」」」」」」
「その意気やよしッ! ならば繰り出すぞ! 屋台へ!」
「「「「「「おう!」」」」」」
Bの言葉に6人のアホどもが応える。このバカどもは一々無駄に叫ばなければ行動出来ないのだろうか。いや多分そうなのだろう。何とも哀れで迷惑な奴らである。




