第1948話 夏だ、祭りだ、ハチャメチャだ2(4)
「・・・・・・それより、俺はそろそろ行くからな。お前と会っちまったせいで、約束の時間に遅れちまいそうだからな」
「じゃあ、一緒にお祭り会場まで行こうよ」
「俺の待ち合わせ場所は会場じゃないから、途中までだったらいいぜ」
影人とソニアはマンションから出た。2人が並んで歩いていると、他にも浴衣姿の人々の姿がチラホラと見えた。
「わあ、この人たちもお祭りに行くんだね。私、初めて行くけど規模は結構大きそうだね」
「まあ地元の人間なら大体は行く祭りだからな。それなりの規模だ。そういや、お前祭りのことどうやって知ったんだよ金髪。こんな郊外の祭り中々知る機会ないだろ」
「この辺りを歩いてたらポスターが貼ってあったんだよ。それもいっぱいね」
影人とソニアがそんな会話をしていると、やがて、学校と祭り会場への別れ道に至った。
「じゃあ俺こっちだから。気をつけて行けよ」
「うん。また後でね影くん」
影人はソニアと一旦別れの挨拶を交わすと風洛高校を目指して歩き始めた。影人がウエストポーチからスマホを取り出して時間を確認すると、時刻は約束の時間の7時を過ぎていた。影人は「やべっ」と声を漏らすと、転ばない範囲で小さく走り始めた。
「はあ、はあ・・・・・・わ、悪い。遅れちまった」
約10分後。影人は風洛高校の正門前にたどり着いた。走って来たので少し息が切れた。
「お、来たかG」
「気にしなくてもいいよ。少しの遅刻くらいよくある事さ」
「そうそう」
「主役は遅れて来るもんだからな」
「よっ、色男! 浴衣凄く似合ってるぜ!」
「だな。Gの暗くもミステリアスな雰囲気に艶が出たって感じだ」
既に正門前に集まっていたA、B、C、D、E、Fは全く気にしていないといった様子で笑った。遅刻した影人を暖かく迎えてくれた6人に、影人もフッと口元を緩ませる。
「・・・・・・ありがとな。お前たちの格好も似合ってるぜ」
A、B、C、D、E、Fの6人も影人と同じく浴衣姿だった。男子の浴衣なので黒や紺色と浴衣の色はほぼ被っていたが、そんな事は些細な問題だ。影人は6人の服装に素直な感想を述べた。
「へっ、よせよ」
「褒めても何も出ないぞG。よし、後でかき氷を奢ろう」
「俺、浴衣褒められるの初めてかも。ありがとな」
「褒め言葉はこれから出会う素敵なかわい子ちゃん用に取っとけよ。でも・・・・・・サンキューな」
「何か褒めてもらうのに性別とかって関係ないんだな。普通に嬉しいぜ」
「ありがとなG!」
A、B、C、D、E、Fの6人は嬉し恥ずかしといった反応を示した。基本、野郎ども、しかも風洛の恥部であるバカどもが格好を褒められる事などまずない。そのため、バカどもはにへらぁとしたかなりキショい顔を浮かべていた。全く、モテないアホどもの傷の舐め合いほど醜いものはない。
「さて、これで全員揃ったな。では諸君・・・・・・行くとするかッ!」
「「「「「「おうッ!」」」」」」
Bが一同に声を掛けA、B、C、E、F、Gのアルファベットズが応える。そして、7人の恥知らずはザッと足音を立てて、夏祭りの会場へと向かった。
――遂に、バカどもの真の暴走が始まる・・・・・・かもしれない。




