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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1945/2051

第1945話 夏だ、祭りだ、ハチャメチャだ2(1)

「――時は来たぜ」

 7月30日、午後6時45分。祭りに出る用意を整えた影人は玄関でそう呟いた。

 A、B、C、D、E、Fと祭りに行くという約束をしたのが数日前。風洛高校はすっかり夏休みへと突入していた。夏休み前の期末考査は死ぬ気で頑張ったこともあり、何とか赤点を回避することが出来た。更に、今年はカンニングをして担任に脅される事もなければ、目下倒すべき強大な(レイゼロールやフェルフィズなど)もいない。つまり、何の憂いもない平和な夏休みを過ごす事が出来るのだ。しかも、影人は留年しているので受験勉強や就職活動もする必要はない。要は遊び放題呆け放題というわけだ。

「くくっ、俺は今年こそ学生らしい夏休みを満喫するぜ。去年みたいにドンパチやる夏休みはもうたくさんだ。俺は魂の友たちとゲロ吐くまで遊びまくる・・・・・・!」

 ニヤリと笑いながら影人が拳を握る。そんな影人を見ていたイヴは呆れたようにこう言った。

『それが留年生の言葉かよ。お前、来年も何だかんだ留年して、今度こそ退学しそうだよな』

「不吉な事を言うなよイヴ。俺はこれでも普通の男子高校生だ。留年したのはたまたま運が悪かっただけ。来年はしっかりと進級してるに決まってるだろ」

『お前が「普通」だったら、世の中の「普通」はバラバラに壊れちまってるよ。つーか、今年の夏休みが平和なんてお前本気で思ってるのか? 絶対また面倒、いや俺からすれば面白い事だな。それに巻き込まれるに決まってるぜ。お前呪われてるし』

「はっ、確かに俺は呪われてるくらいに運が悪いが、さすがに運命さんも手打ちだろ。もうこれ以上の因縁もないんだしな」

 影人がないないと首を横に振る。レイゼロール、零無、フェルフィズ。影人と関わり、かつ世界を巻き込むような(正確には零無だけは違うかも知れないが)事態を引き起こした者たちとの決着は全てつけた。確かに、まだこちらの世界とむこうの世界の境界が不安定で流入者がこちら側に迷い込むという問題もあるが、それは今までの問題と比べれば全然マシと言えるようなものだ。

『確かにお前は今までの因縁を全て清算したんだろうが・・・・・・因縁とか運命ってやつはニョキニョキと生えてくるからな。特にお前の場合は。だから、まだまだ分からないぜ』

「はいはい、そうかよ。でも取り敢えず今日1日くらいは大丈夫だろう」

 影人はイヴの言葉を適当に聞き流すと草履を履いた。夏祭りを全力で楽しむためにはまずは格好からだ。今の影人は黒に金色の三日月の刺繍の入った浴衣を身に纏っていた。2年程前に日奈美の父親――つまり影人の母方の祖父――から譲り受けたものだが、サイズは問題なかった。

「ん? 影人、あんた珍しい格好してるわね。そんな格好でどこに行くのよ?」

 影人が家から出ようとすると、トイレか洗面所にでも行こうとしていたのか、廊下に出ていた日奈美が少し遠い位置からそう声を掛けてきた。

「近場の夏祭り。ほら、一応毎年この日にあるでしょ」

「ああ。そういえばあったわね。でも、あんた去年もその前も祭りになんか行ってないでしょ? 何で今年は行く気になったのよ。あ、まさか誰かとデート? もしかして、ソニアちゃんとか? それかシェルディアちゃん?」

「なんでそこで金髪とか嬢ちゃんの名前が出てくるんだよ。違うよ。男の友達と行くんだよ」

「何だつまらないの。というか、友達いたのねあんた」

「実の息子をなんだと思ってるんだよ母さんは・・・・・・」

「あんたもうちょっとで18歳になるんだから、そろそろ恋人の1人や2人でも作りなさよ。せっかくシェルディアちゃんとかソニアちゃんとか綺麗で可愛い子たちと知り合いなんだから。あと、その前髪も手入れするなり――」

「あーあー。聞こえない聞こえない。じゃあ、そういう事だから俺行ってくるよ。晩ご飯は白飯だけ残しといて。帰ってお茶漬けくらい食べるかもだから。あと、せっかくだから、母さんも父さん誘って祭りでも行けば? 父さんがいま居候してる家は前に教えただろ。父さん、泣いて喜ぶよ。じゃ」

 影人は耳を塞いで聞こえないアピールをすると玄関のドアノブに手を掛けた。そして影人は家を出る。日奈美は「あ、ちょっと!」と言っていたが影人は無視した。

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