第1939話 とある家族の再会2(5)
「うん。そうだよ。実は2、3日ほど京都に旅行に行っててね。八ツ橋を買って来たからシェルディア様にと思って。シェルディア様、いま家にいる?」
「あ、ああ嬢ちゃんなら多分家にいると思うが・・・・・・響斬さん、あんた随分と自由な感じなんだな。レイゼロールのアジトに住んでるんじゃないのか?」
「ぼかぁずっと日本に住んでるよ。レイゼロール様のアジトにはよく行くけどね」
響斬が影人の質問に朗らかに答える。すると、影仁が影人に顔を向けた。
「影人、この人お前の知り合いか?」
「知り合い・・・・・・まあ、知り合いっちゃ知り合いかな」
影人が微妙な顔になる。響斬との関係性は元々は敵だったが、今は味方・・・・・・とも言い切れない何とも言えないものだ。協力する事もあるが、仲良くする事もない。
「そうか・・・・・・お前本当色々な知り合いがいるな。この人、隠しちゃいるが凄い強い・・・・・・只者じゃないだろ。しかも、多分また人間じゃないし」
「っ・・・・・・」
世界を放浪し培われた経験。その経験で研ぎ澄まされた元々の勘の良さ。その凄まじい勘の良さで響斬の正体にほとんど辿り着いた影仁。響斬は一瞬で自分の隠していた事を見破った影仁に驚いた顔を向けた。
「・・・・・・凄いな。この御仁、只者じゃないね。影人くん、この人は?」
「あー、俺の父親だ。ちょっと世界を放浪して元からよかった勘に更に磨きがかかったみたいでな」
素直に称賛の言葉を述べる響斬に影人が影仁を紹介する。影仁は「どうも帰城影仁です。息子がお世話になっております」と軽くお辞儀をした。
「この人が君の・・・・・・どうも響斬です。姓は偽名用のものは遠山です。よろしくお願いします」
響斬も影仁にお辞儀を返す。零無との戦いの時に、零無と影人の因縁、それにまつわる話をレイゼロールから聞いた事がある響斬は影仁がどのような境遇にいたかをある程度知っていた。
「響斬さん、あんた日本に住んでるって言ってたが、どの辺りに住んでるだ? ここから近いのか?」
「近いほうだよ。30分から1時間掛からないくらいかな」
「っ、そうか・・・・・・ちなみにもう2個ほど聞くが、一人暮らしか? 部屋は余ってたりするか?」
「一人暮らしだよ。部屋も余ってるっちゃ余ってるけど・・・・・・なんで?」
響斬が不思議そうに首を傾げる。影人の質問の意味を理解した影仁はハッとした顔で影人を見つめた。
「影人、まさかお前・・・・・・」
「ああ。そのまさかだ父さん。こいつは奇跡だ。チャンスはここしかない」
「???」
影人が影仁の言葉に頷く。だが響斬には何のことだか全く分からなかった。
「響斬さん。実はあんたに、いやあなたにお願いがあるんだ。もちろん、嫌なら全然断ってくれてもいい。だけど、出来れば受けてほしい。頼りは正直、あなたしかいない」
「っ・・・・・・」
影人が真剣な表情で響斬にそう言葉を切り出す。影人のあまりの真剣さに響斬の表情も思わず引き締まった。
そして、
「響斬さん、頼む。どうか――」
影人は響斬にある願い事を告げた。




