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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1933/2051

第1933話 とある家族の再会1(3)

「そう。まあ、この世界には私以外にも多くの【あちら側の者】が紛れているものね。1人2人、あなたがそういった者たちと出会っていたとしても驚きはないわ。でも、気配だけで私の正体に辿り着いたのは驚きね。あなた、本当に勘がいいらしいわ」

「そいつはどうも。でも、驚いたのは俺も同じだよ。こんな街中にあんたみたいな方がふらっといるんだからな。しかも、ウチの隣人だっていうし。影人はいつからこの子・・・・・・シェルディアさんと知り合いなんだ?」

「1年ちょっと前くらいからかな。たまたま出会って、色々とあって・・・・・・今じゃすっかり仲のいいご近所さんだよ」

 顔を向けてそう聞いて来た影仁に、影人はそう返答する。シェルディアとは立ち話だけでは言い尽くせないほどに色々な事があった。そのため、影人は簡潔に今の自分とシェルディアとの関係を述べた。

「あら、ご近所さんだなんて悲しいわね。私とあなたはもっともっと深い関係だと思っていたけど」

「深い関係・・・・・・? え、影人どういう事だ?」

 言葉通り悲しげな顔を浮かべるシェルディア。影仁は戸惑った様子で息子にそう聞いた。

「ど、どうもこうもない! 確かに嬢ちゃんとは近所って言葉だけじゃ片付けられないような事も色々あったけど! 嬢ちゃん! 父さんの前でからかうのはやめてくれ!」

 影人はカアッと顔を赤くさせ抗議した。普段ならば、これほど慌てふためくような事はないのだが、影仁がいるという事実が、影人に年相応の――と言っていいかは分からない――激しい羞恥の感情を喚起させた。

「ふふっ、ごめんなさい。でも、あなたがそこまで恥ずかしがるのも珍しいわね。いいものが見れたわ」

「本当、勘弁してくれよ・・・・・・」

 シェルディアが面白そうに笑い、影人がまだ残る恥ずかしさに頰を掻く。影人とシェルディアのやり取りを見ていた影仁は表情をふっと緩めた。

「なるほどな。確かに、シェルディアさんは仲のいいご近所さんみたいだ。これからもどうかウチの息子をよろしくお願いします」

「こちらこそ。安心してちょうだい。影人の事は私が一生面倒を見るつもりだから」

「だってよ影人。良かったな。いい子と巡り会えて。俺、孫の顔は早く見たい派だ」

「お前はいったい何を勘違いしてやがるんだバカ親父!? ふざけるのも大概にしろ! 今の時代それセクハラだぞ! もう知るか! 穂乃影と母さんにボコボコにされちまえ!」

 恥ずかしさやら怒りやらでもう色々とブチギレた影人は、そう吐き捨てるとそのままマンションの中へと消えて行った。

「あちゃー、ちょっとやり過ぎたかな・・・・・・? ダメだな。まだ距離感が掴めてないや」

 影人の背中を見送った影仁は困ったように頭を掻いた。冗談のつもりだったのだが、影人にとっては度が過ぎたものであったらしい。確かに、あの年頃の時に親に女の子関係の冗談を言われるのはキツいかと、影仁は反省した。

「きっとこれから掴めて来るわ。でも、本当あれほど子供っぽい影人は初めて見たわ。私たちの前では決して見せない顔・・・・・・大丈夫よ。あなたは間違いなく影人の親。影人が無償で信頼する者。時の年月があったとしても、すぐに影人との距離は縮まるわ」

 シェルディアはそう言うと自身もマンションに向かって歩き始めた。そして、くるりと振り返り影仁に微笑んだ。

「さあ、あなたも行きましょう。久しぶりの家族との対面なのでしょう。それと、私の事はもう少し砕けた呼び方で構わないわ。そちらの方が自然だから。ああ、でも『嬢ちゃん』だけはダメよ。私の事をそう呼べるのはただ1人だけだから」

「ああ、分かったよ。シェルディア・・・・・・ちゃん」

 影仁がそう呼ぶとシェルディアは小さく頷いた。それは了承の合図だ。そして、シェルディアはマンションの中へと入って行った。

「・・・・・・うん。どうやら、俺の息子は隣人に愛されてるらしいな」

 影仁は暖かな気持ちを抱くと、自身もマンションの中へと姿を消した。

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