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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1929/2051

第1929話 父の帰還(4)

「あ、座った」

「なるほど。どうやら、今の会話が帰城くんの心を打ったみたいだね」

 暁理が少し驚いた様子になり、光司は意味深に笑う。再び弁当箱を開けた影人はギロリと前髪の下の目で光司を睨んだ。

「勘違いするな香乃宮。移動に貴重な昼休みの時間を使うのが面倒になっただけだ。飯食い終わったら俺は速攻ここから離れる」

「それって実質一緒にお昼ご飯食べてくれるって事だよね!? わあ、ありがとう帰城くん!」

「なんだかんだ、帰城くんの最後に折れてくれる所好きよ。ありがとう」

 陽華と明夜が明るい笑顔になる。影人は「だから、勘違いするなって言っただろ!」とフンと顔を背けた。そして、陽華、明夜、イズ、光司、暁理はそれぞれ購買で買った食べ物やお弁当を広げた。

「流石に7月。日陰といえどもちょっと暑いね。そうだ。話は変わるんだけど、みんなは進路どうするの? そろそろ本格的に決めなきゃならない頃でしょ。ちなみに、僕は近所の◯◯大学に進学予定」

 暁理がお弁当の唐揚げを摘みながらそんな話題を振った。影人以外の者たちは3年生だ。否が応でも、卒業後の事を考えなければならない。

「私も早川さんと一緒かな! 今のところ、特にやりたい事とかも見つかってないし、大学で何かやりたいこと見つけたいなって」

「私も陽華と同じね。というか、この辺りで進学する子は大体◯◯大学よね。近いし、受験も難しすぎないし。会長・・・・・・真夏先輩もあそこに進学したし、私たちのクラスの子も、ほとんど◯◯大学に進学予定よ」

「私も陽華と明夜と同じ大学に進学予定です。まだまだ学びたい事はありますし、真祖シェルディアも好きにしろと言ってくれました」

「僕もみんなと同じかな。一応、父や担任教師はいわゆる難関大学の方が選択肢は広がるぞと言ってくれたけど、僕はこの地域やみんなの事が好きだからね」

 陽華、明夜、イズ、光司がそれぞれそう答える。各自の答えを聞いた暁理は少し驚きながらも、嬉しそうな顔を浮かべた。

「へえ、みんな一緒なんだ。流石にみんな一緒だとは思わなかったなー。でも、凄く嬉しいな。よし、受かったらみんなでパーティーしようよ。盛大にさ。それで、みんなでキャンパスライフ楽しんじゃおうぜ」

「うん! しよしよ!」

「打ち上げは学生の華だもの。絶対やりましょう」

「了解しました」

「今から楽しみだね」

 暁理の提案に陽華、明夜、イズ、光司が頷く。暁理は影人の方に顔を向けた。

「影人は進路どうするつもりなの? 君はまだ2年というかまた2年だけど、ぼんやりとは考えてるんだろ?」

「・・・・・・別に先の事はあんま考えてねえよ。というか、考える暇がなかったからな。だがまあ、俺の今の目標はまた留年せずに進級する事だ。それ以上でも以下でもない」

 影人は自身の正直な思いを暁理に教えた。影人の答えを聞いた暁理は「あー、まあ君の場合は本当に色々あったからね・・・・・・確かに、考えられないよな」と珍しく同情した。

「・・・・・・一応、デカいヤマは片付いたが、俺もお前らもまだ面倒事は――」

 影人が再び口を開こうとした時だった。突然、陽華と明夜、暁理と光司の顔色が変わった。

「ごめんイズちゃん! 帰城くん! ちょっと行ってくるね!」

「イズちゃん、悪いけど私たちの食べ物教室に持って行っておいて!」

「じゃあ影人! 僕のは君に頼んだ!」

「僕もお願いするよ帰城くん!」

 陽華、明夜、暁理、光司はそれだけ言い残すと、どこかに向かって走って行った。

「あー・・・・・・言おうとしたタイミングで早速かよ」

「・・・・・・あなたは行かなくてもいいのですか、帰城影人」

 4人の行動で全てを察した影人がそう呟き、同じく4人の行動を理解していたイズが影人にそんな言葉を投げかけた。

「いつもより人数が多いのは多少気になるが・・・・・・今回俺に合図はなかったからな。大丈夫って事だろう。それに・・・・・・」

 影人はフッと笑うと、

「あいつらはとっくに一人前だ。もう、俺が守る必要もそうそうはねえよ」

 そう言った。

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