表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1920/2051

第1920話 転校生 イズ1(5)

「零無ならさっさと最低限の修復を終えてあなたの元に戻ると、張り切って直接境界に飛んで作業中です。本来ならば、そちらの方が早く済むため私も境界に行きたいところですが・・・・・・私は本来の『空』としてあまりこの場を離れられないのです」

「そ、そうか。嫌だな。あいつ絶対戻ってきたら一段と面倒くさくなる・・・・・・あいつそのまま一生境界から帰ってこないでほしいな」

 影人は今からげんなりとした心持ちになった。閑話休題。シトュウが話を戻す。

「それで、どのような設定でイズという存在を世界に認識させればいいのですか。このような形の世界改変にはある程度詳細な情報がいりますよ」

「それならイズや嬢ちゃんと話をして纏めて来てある。出来るだけ違和感のないそれっぽい設定だ」

 影人はポケットから紙を取り出した。真界は基本的に特別な者しか入る事は出来ない。そして、イズもその例には漏れない。そのため、例外である影人がイズやシェルディアと練り上げた設定をシトュウに伝える役目を負ったのだった。

「ふむ・・・・・・分かりました。では、この設定で世界改変を行います。零無と念話して息を合わせますので少し待ってください」

「ああ、分かった。お願いするぜシトュウさん」

 影人から紙を受け取ったシトュウが了承の言葉を述べる。影人は改めてシトュウに依頼の言葉を放った。

 ――こうして、イズは初めから存在したと世界に認識された。











(それから書類を集めて転入準備。学力試験はアオンゼウの膨大なメモリーで一瞬で暗記。あれよあれよという間に転入だもんな。本当、凄え力だぜ。世界改変っていうのは)

 記憶の海から現実に戻って来た影人は、シトュウの神としての超常性(それをいうならば、今回一緒に世界改変を行った零無もだが、零無はまあいいだろう)に改めて畏怖の念を覚えた。

(イズが風洛高校に転校してきて、今日でちょうど3日目か。季節外れの転校生に人形みたいに精緻なイズの見た目と相まって、イズの奴はすっかり人気者。ちょっと前までなら考えられなかったことだな)

 だが、悪くはない結果だろう。少なくとも、イズを滅していればこのような結果にはなっていなかった。今、影人の前で暁理と共に制服を来て歩いている光景は、陽華と明夜が掴み取ったものだ。

 ただ、1つだけ釈然としない点は――

「でも、よかったねイズちゃん。朝宮さんと月下さんと同じクラスになれて」

「はい。一応、面接の時に陽華と明夜が知り合いという事と、慣れない異国の地で心細いという事を強調したのが効きました」

 暁理の言葉にイズがコクリと頷いた。そう。イズが転入したのは、当然というべきか陽華や明夜、暁理や光司といった者たちのいる第3学年。つまり、最高学年だ。

「しかし、帰城影人が留年していたのは意外でした。私が思っていた以上に、帰城影人は愚鈍・・・・・・いえ、アレな人物だったようですね」

「誰が愚鈍だイズてめえ!? 俺は愚鈍でもアレでもない! 俺が留年したのはちゃんと事情があったからだ!」

 振り返り蔑みと憐憫の込もったような目を向けて来たイズに影人は怒りの声を上げ抗議した。そう。釈然としない点というのは、イズが影人よりも上の学年という事だ。

「うるさいですよ後輩。私はあなたよりも上の学年。つまりは先輩です。人間は上下関係を大切にすると聞きます。ならば、それに相応しい言葉遣いをしてください」

「そうだぞ後輩。もっと先輩を敬えよ」

「このッ・・・・・・! てめえら、黙って聞いてりゃいい気になりやがって・・・・・・!」

 イズと暁理にそんな言葉を浴びせられ、影人は自身の体に怒りが満ちるのを感じた。

「別にいい気にはなっていませんが。それよりも、いいのですか。そろそろ人も増えて来ました。これ以上私と会話すれば目立ちますよ」

 しかし、イズは影人の怒りなどどこ吹く風といった様子だった。そして、イズの指摘通り風洛高校の生徒たちの姿が増え始めた。これ以上話題の転校生と口論を続ければ間違いなく目立つ。影人は「ちっ! 覚えてやがれよ」と三下のような捨て台詞を吐いた。

(ああ、朝から騒がしい。ったく、俺の静かで平和な日常はどこへ行ったのかね・・・・・・)

 内心でそう愚痴りながら、影人は晴れ渡る青空を見上げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ