第1911話 全ての因縁の決着(5)
「言いたい事は分かります。ですが、その件や事後処理は後日にしていただけませんか。その代わり、危惧している事は必ず起こらないと誓います。口だけにはなりますが、絶対に大丈夫ですから。すみませんが、どうか信じてください」
「・・・・・・そうじゃな。激闘が終わったばかりで、当然疲れもあるじゃろう。そして、君がそう請け負うのならば信じよう」
ガザルネメラズはイズから視線を外した。影人は「ありがとうございます」とガザルネメラズに感謝の言葉を口にした。
「・・・・・・フェルフィズ。お主には色々と聞きたい事もある。なに、時間はたっぷりあるんじゃ。色々と聞かせてもらうぞ」
「あなたが話し相手とはつまらなさそうですね・・・・・・どうぞ。好きにしてください」
フェルフィズはどうでもよさそうな、投げやりな様子であった。ガザルネメラズがフェルフィズの肩に手をかける。すると、先ほどと同じ光の柱が現れ、ガザルネメラズとフェルフィズを包み込んだ。それは神を神界に送還する光であった。
「ガザルネメラズさん。最後に1つだけ。フェルフィズを拘束しているその鎖は、多分神界に戻れば、少しして消えます。だから・・・・・・」
「了解した。戻った瞬間にワシがフェルフィズを拘束しよう。神界ではワシも力が使えるしの」
「お願いします」
やがて、ガザルネメラズとフェルフィズは光の粒子となって消えた。光の柱も同時に虚空へと収束した。
「・・・・・・で、さっきの話の続きだが、俺に何の用だ?」
影人は中断されていた話を再開し、再びイズにそう聞いた。
「・・・・・・あなたにも感謝したかったのです。事情はどうであれ、あなたは製作者を殺さなかった」
「お前が俺に感謝ね・・・・・・人間じゃなくても、変われば変わるもんだな」
イズの言葉を聞いた影人は感慨深い様子でそう呟いた。
「・・・・・・勘違いはするなよ。あいつにくれてやったのはもう1つの死だ。これからあいつは死にながら生きる。それに・・・・・・何度も言ってるが、あいつが生きたいと心変わりすれば、その時は本物の死を与える」
「・・・・・・それでもです。どのような形であれ、製作者が存在し続けるのならば・・・・・・私にとってはそれが最良です。だから・・・・・・ありがとうございます。帰城影人」
「・・・・・・そうかよ」
影人はどう言葉を返してもいいのか分からず、ただ一言そう言った。影人はなんとはなしに空を見上げた。輝く月に、今日は晴れているためか星がよく見える。周囲に自然が多いためか、その夜空はいつもよりも美しく感じた。
「まあ、なんにせよ・・・・・・これで、やっと一件落着だな」
まだ面倒事はいくつか残っている。だが、今日くらいは。美しい夜空が、まるで自分たちを静かに祝福しているような気分を味わいながら、影人はそう言葉を吐いた。
――こうして、忌神との戦い、忌神との全ての因縁は決着したのだった。




