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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
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第191話 己の内へと(3)

「まず初めに悪意が俺の体を乗っ取ったのは、レイゼロールとの戦いの時だ。俺がヘマをやってヤバかった時に俺は何か――この時はまだ何かだったが――に自分の体を乗っ取られた。この時は俺の意識自体はあるにはあったが、体の主導権は完全に持っていかれてた」

 影人は右手の人差し指を1本立て、そこで話を一旦区切った。

「次は2回目のフェリート戦の時だ。まあ、これに関しては完全に俺の記憶がないから憶測にはなっちまうが、ほぼ確定と見ていい。この事は前にお前に話したが、俺は女の声を聞いた。『お前に死なれちゃ困る』って声だな。んで気がつけば俺は神界にいた。これが2回目」

 右手の中指を立てて、影人はそう語った。

「んで、ついさっきのキベリア戦の3回目だ。俺は明確な悪意の干渉を受けた。この3回目は今までと違う特徴があった。それは俺の意識がはっきりとしてる時に、俺に干渉してきたって事だ。1回目と2回目は、基本的に俺の意識がヤバかったり、ぼんやりとしてた時にしか干渉してこなかった。ここから分かる事は悪意の自我がよりハッキリとしてきたって事と、力がより強まったって事だ」

 影人は右手の薬指を立てると、つい先ほどのことを鮮明に思い出したながらそう言った。

「今までの状況の振り返りは分かりましたが・・・・・・影人、私が聞いているのはあなたが掴んだ悪意の正体です。それを早く教えてくれませんか?」

 痺れを切らしたようにそう口を挟んできたソレイユ。そんなソレイユに影人は「だから、もったいぶってるって訳じゃないって言ったろ」とため息を吐いた。

「お前、さっき俺が簡潔に言ったら理解出来なかっただろ。だから、お前にもちゃんと理解できるようにこうして詳しく話してんだろうが。文句言うな」

「は、はい・・・・・・・・ごめんなさい・・・・!」

 ソレイユは素直に素早く謝罪した。そう言われてしまえば、自分は何も言えない。というか、珍しく影人が気を遣ってくれていたのに、文句など言えるはずがなかった。ただ、少々いやかなり気に食わないのは、影人が自分の事を本当にバカだと思っている点だ。それだけはどうしても納得できない。

(うう・・・・・・私はバカではないのにっ!)

 内心そう拗ねながらソレイユは影人の話に耳を傾けた。

「んで、この3回の干渉にはある共通点がある。それは俺がスプリガンに変身した時しか干渉を受けていないって事だ。つまりは状態が限定化されてる。これは大きなヒントだ」

 そう。悪意が干渉してきたのは影人がスプリガンに変身している時だけだった。普段の自分の時には悪意は1度も干渉してきていない。考えてみれば、これは不思議な事だ。なぜ悪意はスプリガン時の自分にしか干渉出来ないのか。

「次、悪意は()()()俺には使えない回復と身体能力の常態的強化を使えた。しかも、極め付けは闇の力を無詠唱で使える。考えてみればおかしくないか? なぜ悪意は俺には出来ない事が出来る? この疑問の答えは、悪意の正体を理解すれば納得がいった」

 実はこの疑問が悪意の正体を知るためには最も重要だと言っても過言ではない。影人がこれらの疑問を抱いたのは、最初の1回目、レイゼロール戦の後だ。2回目と3回目に関しては影人に記憶はないが、2回目のフェリート戦の時は心臓を貫かれたはずなのに、目を覚ましたら無傷であったため、悪意が回復の力を使ったのは確定しているだろう。3回目のキベリア戦に関しても、色々と傷を負っていたはずなのに無傷の状態になっていたということはそういう事だ。

「まあ、俺は結局わざと悪意に体を乗っ取らせて、その正体を理解したが・・・・・・説明するとこんな感じだな。さあ、ここからがお楽しみだ。よーく聞けよ、ソレイユ。悪意の正体は――」

 影人がついにその正体を口にした。その正体を聞いたソレイユは、大きく目を見開き言葉を漏らした。

「え・・・・・・・・・・」

 悪意の正体。 

 それは。

 思ってもいないものだった。

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