第1908話 全ての因縁の決着(2)
「わっ!?」
「っ、イカした鳥さんね! ありがとう!」
「ありがとう帰城くん!」
怪鳥の背に着地した陽華、明夜、光司。光司は上空に浮かぶ影人に向かって感謝の言葉を述べた。
「礼はいい! それより、そいつらを頼んだぞ香乃宮! 俺は他の飛べない奴らも助ける!」
「うん! 任されたよ!」
影人はそう言うと、上空に向かって駆け上がっていった。影人は浮遊の力があるため、自在に宙を飛ぶ事が出来る。怪鳥はある程度自身の意思を持っているのか、上から降り注ぐ瓦礫を避けながら、光司、陽華、明夜を地上に運ぼうとした。
「帰城くんもだけど、香乃宮くんも助けてくれてありがとう!」
「私も感謝するわ。ありがとう。でも、随分と無茶な事をしたわね。香乃宮くんは帰城くんと違って飛べないでしょう?」
少し余裕が出来た陽華と明夜は改めて光司にそう言った。光司はいつも通りの爽やかな笑みを浮かべた。
「ははっ、そうだね。でも、気づいたら体が動いてしまっていたから。それに・・・・・・約束もあったから」
光司はいつか影人と2人で話をした時の事を思い出す。夜の公園で光司と影人は誓った。陽華と明夜を、誰も彼もを護り切ると。影人もその誓いを忘れていないのは、陽華と明夜がイズと真っ向勝負をする前にアイコンタクトを交わした時に分かっていた。だからこそ、影人も陽華と明夜の危機に素早く動く事が出来たのだろう。
(いや、それだけが理由じゃないな。帰城くんはずっとスプリガンとして、影から朝宮さんと月下さんを見守り続けてきた。いつだって、2人を危険から守るために・・・・・・だからこそ、自然と動けた。きっと、それも大きく関係しているんだ)
光司は月光に照らされながら、夜の闇の中を駆け上っていく影人を見つめた。影人は光司との約束通り、陽華と明夜だけでなく誰も彼もを護るために、黒い綺羅星の如く昇ってゆくのだ。
「・・・・・・全く、君には敵わないな」
「「?」」
まるで眩しいものを見上げるように目を細めながら、光司はそう呟いた。光司の呟きを聞いた陽華と明夜は不思議そうに首を傾げた。
「どうしたの香乃宮くん? それに、約束って?」
「何だか気になるわね」
「別に大したものじゃないよ。ただの・・・・・・」
陽華と明夜に対して、光司は軽く首を横に振った。
「男同士の何でもない約束さ」
そして、明るく爽やかな笑みを浮かべた。
(基本的に古き者たちとイズとレイゼロールとかは大丈夫そうだな。闇人もフェリートとかキベリアさんは飛行能力はあるが・・・・・・他の亀裂での戦いで力を消費してるだろうからな。一応、助けとくか)
影人はスプリガンとしての残り少ない力を消費すると、再び闇色の怪鳥を創造した。1体ではなく、複数体だ。
「落ちている奴らを全員助けろ」
「「「「「!」」」」」
影人は怪鳥たちにそう命令した。影人の命令を受けた怪鳥たちは、即座に落下している者たちに向かって飛んで行った。怪鳥たちは次々と落下している者たちをその背で受け止める。これで、地面に落下する者はいないだろう。
「さて、あのバカ野郎は・・・・・・」
影人は瓦礫を避けながらある人物を探す。すると、影人は視界の端にその人物を見つけた。
「は、ははっ・・・・・・」
上下逆さまで落下しているフェルフィズは壊れたように笑っていた。こんな事をしても不老不死の自分は死ぬ事は出来ない。例え、地面に落下してぐちゃぐちゃになっても時間をかければ綺麗に元通りになる。つまり、フェルフィズの最後の悪あがきは、そもそもがただの嫌がらせ以上の意味を持たないのだ。それを自覚しているフェルフィズは、自身の滑稽さがおかしくて仕方なかった。




