第1907話 全ての因縁の決着(1)
「っ、フェルフィズ! お前何をした・・・・・・!?」
揺れる地面。ひび割れ崩れゆく壁。そんな中で影人はフェルフィズにそう問いただした。
「ひひひひっ! 私の最後の抵抗ですよ! この神殿を崩壊させた! 間もなく、この神殿は完全に崩れる!」
影人の詰問にフェルフィズは半狂乱の様子で答えを叫ぶ。フェルフィズはズイッと上半身を起こし座ると、影人を睨め上げた。
「あなたがいけないんですよ影人くん! あのまま死なせてくれたのなら、私はこの仕込みを起動させはしなかった! この事態を引き起こしたのは君だ!」
「このクソ神が・・・・・・! 責任転嫁も甚だしいな・・・・・・! ちっ、余計な事しやがって!」
影人が悪態をつく。本当に最後の最後まで往生際が悪い。しかも、その諦めの悪さがどことなく自分と似ているようで余計に最悪な気持ちになる。正確には違うと信じたいが、影人の中に同族嫌悪という言葉が浮かんできた。
そうこうしている内にも、崩壊は凄まじい速度で進行している。亀裂はやがて床にまでも広がり――
「えっ!?」
「きゃっ!?」
床が崩れ落ち始めた。そして、その場所に立っていた陽華と明夜は下へと落下した。
「っ、陽華! 明夜!」
近くにいたイズが驚いた顔で2人の名を呼ぶ。陽華と明夜はイズを救うために力を使い果たし、現在は光導姫形態ではない。ただの生身の人間だ。忌神の神殿の崩壊の具合にもよるが、このままではよくて重傷か最悪の場合は死だ。イズは落ち行く2人を助けるために、兵装を展開しようとした。
だが、その前に2つの影が飛び出した。
「朝宮さん月下さん!」
「ったく、世話の焼ける・・・・・・!」
その影は光司と影人だった。2人は何の躊躇もなく、誰よりも速く陽華と明夜を助けるために飛び降りた。
「2人とも! 僕の手を!」
光司が落下しながら、陽華と明夜に向かって両手を伸ばす。幸いというべきか、下層の床も崩壊を始めていたので、2人が床に激突する事はなかった。
「香乃宮くん!? 帰城くん!?」
「っ、お願い!」
陽華と明夜は驚いたように影人と光司を見上げながらも、光司に向かって手を伸ばした。
(っ、ダメだ! 届かない!)
光司は2人の手を掴もうと必死に手を伸ばし続けたが、中々手は届かなかった。無理もない。1番速く助けに落ちたといっても、先に落ちたのは陽華と明夜だ。何か途中で加速する手段でもなければ、陽華と明夜との距離が縮まる事はほとんどない。光司が焦り歯痒く思っていると、
「闇よ、この者を加速させろ! ちゃんと掴めよ、香乃宮!」
「っ、うん!」
影人が光司に闇の力を施した。その力は言葉通り、光司の落下速度を加速させた。結果、光司の手は陽華と明夜の手を掴む事に成功した。
「掴んだよ帰城くん! でも、ここからどうすれば――!」
「喚くなよ。安心しろ。俺はスプリガンだぜ」
落ち行く中、影人はフッと余裕げに笑う。影人は闇色の巨大な怪鳥を創造した。怪鳥は翼をはためかせ加速すると光司、陽華、明夜をその背に乗せた。




