第1899話 最後の審判(2)
「ふん。くだらん茶番だ。おい、レイゼロールとか言ったな。さっさとそいつを殺せ。殺さんなら俺がやるぞ」
「分かっている。黙って見ていろ。シェルディアの同族よ」
軽く苛立ったようなシスにレイゼロールはそう言葉を返す。レイゼロールは自身のアイスブルーの目で、フェルフィズの薄い灰色の目を正面からしっかりと見つめ直した。
「言いたい事はそれだけか。では・・・・・・審判の時間だ」
レイゼロールはその身から『終焉』の闇を解放した。レイゼロールの瞳の色が漆黒へと変わり、全身から全てを終わらせる闇が立ち昇る。
「さて、私の長かった生もいよいよこれで終わりですね・・・・・・」
間近からその闇を見たフェルフィズは軽く両目を閉じた。まるで、死を受け入れるかのように。
「製作者・・・・・・」
そんなフェルフィズに声を掛ける者がいた。イズだ。イズはどこか悲しげな顔を浮かべているように見えた。
「・・・・・・この短期間で随分と表情が豊かになりましたね、イズ。実に好ましい変化だ。最後にあなたの変化が見れてよかった」
フェルフィズは優しい笑みをイズに向けた。その笑みも、言葉もフェルフィズの本心からのものだった。
「っ・・・・・・あなたは私を恨んではいないのですか。私がこの2人に・・・・・・陽華と明夜に絆されなければ、あなたの目的は叶ったかもしれないのに」
「恨む? まさか。とんでもない。私は君の変化を喜びこそすれ、恨むなんて事はしませんよ」
フェルフィズは即座にかぶりを振った。そして、変わらずイズに優しい笑顔を向ける。
「イズ。あなたはまだ生まれたばかりの存在と大差ない。これからゆっくりと自分の事、あなたの興味のある事を知っていきなさい。そして、しっかりと生きてください。あなたは特殊な存在ですから、色々と苦労もあるでしょうが・・・・・・きっと、君を救ったそこの光導姫たちや、影人くん、他のお人好したちが助けてくれますよ。ねえ?」
「っ、はい! もちろんです!」
「イズちゃんを助けた責任は最後までしっかり取るつもりです」
陽華と明夜がしっかりとした口調で答える。2人の答えを聞いたフェルフィズは満足そうな顔になった。
「影人くん、君も私が安心して逝けるように答えてくださいよ」
「はあ? 何で俺が・・・・・・というか、お前みたいな奴が安心して逝こうとするな」
「それくらいはいいじゃないですか。死は全ての者に平等に訪れる安寧ですよ。それよりも、早く答えてくださいよ」
「ちっ・・・・・・分かったよ。こいつが窮地に陥ったら俺も助ける。これで満足か」
「ええ。君がそう言ってくれるのなら安心だ。イズをよろしく頼みます」
ぶっきらぼうに答えた影人に、フェルフィズは再び満足そうな顔を浮かべた。




