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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1896/2051

第1896話 決着、忌神との決戦2(4)

「・・・・・・フェルフィズ、お前はどうして狂った。なぜ、忌神や狂神と呼ばれるような存在になったんだ? ソレイユから聞いた話じゃ、お前は元々は心の優しい誰からも慕われる神で、平和を愛していたんだろ。それが今じゃ真逆だ。お前に何があった?」

 そもそもの問いを影人はフェルフィズに行った。ソレイユから聞いた話では、フェルフィズは「フェルフィズの大鎌」を作り出した辺りから狂い始めたという。そして、遂には同族である神を殺した。フェルフィズという神に何があったのか。影人はそれが気になった。

「どうして狂った、ですか・・・・・・そうですねえ・・・・・・」

 フェルフィズはどこか遠い目を浮かべた。その様子は、これまで神として生きてきた、遥かに長い時を思い出しているようだった。

「・・・・・・正直に言えば特に、特に理由はないんですよ。冗談や嘘のように聞こえるでしょうが。本当です。理由があって狂えば、私はまだマシだったでしょうね」

「っ・・・・・・」

 フェルフィズは、彼にしては珍しい、ぼんやりとした顔でそう答えた。その答えを聞いた影人は驚いたような、或いはショックを受けたような顔になった。

「私が狂った事に理由はありません。ただ・・・・・・今思うと、私の気質が多少は関係していたかもしれませんね。神としての存在意義、変わり映えのない日々、平和という名の退屈・・・・・・それらに、私は無意識の内に飽いていた。日常という名の毒は、じわじわと私を蝕んでいた。丁度、人間が非日常に憧れるように、私も変化を望んでいた・・・・・・」

 神としての長過ぎる生。死する事のない理。死にたいと思った事もあった。だが、その時は死ぬ手段

なかった。

「私にとっての世界はいつしか停滞していた。停滞している世界など、死んでいるものと同義だ。ですが、私はその世界を受け入れ続けた。変える方法も、そして、実際に変えようとする気力もなかったですから。ですが・・・・・・そんな時、ある神器が出来ました。その神器に宿った力は全てを殺すという破格の能力であり、げに恐ろしきものでした」

「・・・・・・フェルフィズの大鎌か」

「ええ。大鎌が出来た時、私は震えた。その恐ろしさから。そして・・・・・・興奮から。私はね、影人くん。感動したんですよ。この大鎌があれば、この停滞した世界を壊す事が出来るかもしれないと。実際に停滞した世界を壊す可能性がある物を手に入れた私は、内にあった思いを抑えきれなくなっていった」

「・・・・・・その果てが同族、神殺しかよ。はっ、おもちゃを手に入れてはしゃぐ・・・・・・ガキと何にも変わらねえな。いや、なまじ知性があるぶんガキよりタチが悪い」

「正論ですね。ええ、まさにその通りだと思いますよ」

 影人の冷め切った軽蔑の言葉にフェルフィズが頷く。自嘲の笑みを浮かべるでもなく、フェルフィズは事実としてその言葉を受け入れた。

「・・・・・・私が言うのもあれですが、私が殺した神はいい神でしたよ。少し厳格なところもありましたが、それでも日に日に内なる思いに呑まれていく私を気にかけてくれた。結局、私は彼を殺し、それが原因で他の神々から死の粛清を受けた。受けたとはいっても、君も知っての通り私は死を偽装したのですがね。そして、私はこの世界に降り立った。誰の邪魔も受けぬ世界。いよいよ、私は内なる思いを全て解放した。・・・・・・とまあ、私が狂った経緯はこのような感じですかね。この世界を壊そうと思ったのは、イズには話しましたが単なる暇つぶしです。それが長く考えている内に、生きる目的のようになってしまった・・・・・・そういう感じです」

 自身の事を話し終えたフェルフィズは軽く息を吐いた。忌神フェルフィズ。謎と狂気に包まれた神の心の内を聞いた影人は、しばらくの間言葉を発さなかった。

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