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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1892/2051

第1892話 決着、忌神との決戦1(4)

「・・・・・・全くあなた達は・・・・・・本当に・・・・・・本当に・・・・・・甘いですね・・・・・・」

 2人のその言葉を受けたイズは呆れたように、しかしどこか嬉しげに、優しげに笑った。

「私は・・・・・・私は全てを殺す武器の意思ですよ」

「「うん」」

「・・・・・・私は世界に混乱を招こうとしたモノですよ」

「「うん」」

「・・・・・・私はあなた達や、あなたの大切な者たちを何度も殺しかけたモノですよ」

「「うん」」

「・・・・・・私は様々な問題を抱えている厄介極まりない存在ですよ。心だって自覚したばかりだ。・・・・・・それでも、それでもあなた達は・・・・・・」

 イズはその両の瞳で陽華と明夜を見つけた。その瞳は今にも泣きそうだった。

「私と・・・・・・友達になってくれるのですか?」

「当然!」

「当たり前よ!」

 陽華と明夜が笑顔で答える。イズは泣き笑うような顔になると、自身の右手を2人の手に重ねた。

「よろしくお願いします。陽華、明夜。私にこの世界の事、あなた達の事、色々な事を教えてください。私は知りたい。あなた達と共に」

「うん! こっちこそよろしくねイズちゃん!」

「ええ! 一緒に生きていきましょう!」

 陽華と明夜がイズの手を握る。イズも、陽華も明夜も笑顔を浮かべていた。先ほどまで敵同士であった者たちが手を取り合い笑い合う。それは何とも不思議な光景だった。だが、確かに暖かで優しい光景であった。










「ふふっ、やったわね陽華、明夜。この光景はあなた達だからこそ掴み取れた光景。世界もイズも、両者を救った紛れもないハッピーエンドよ」

「朝宮さん、月下さん・・・・・・やったね」

「ひゅー・・・・・・すげえな」

「生物ではない無機なるモノを救うか・・・・・・まさか本当にやり遂げるとはの。やりよるの」

「ふん・・・・・・やっとか。フェルフィズの大鎌の意思とはいえ、所詮は武器の意思だ。我を浄化したのだから、それくらいはしてもらわねば困る」

「・・・・・・全く、甘ったれた光景ね。でも・・・・・・悪くはないわ」

「信じてたわ。陽華ちゃん、明夜ちゃん・・・・・・」

「コングラッチュレーションズ! ハッピーエンドだね!」

「これぞヒロインって感じだね。おめでとう、朝宮さん月下さん。そして、ありがとう」

 陽華と明夜、イズが手を取り合った光景を見ていたシェルディア、光司、壮司、白麗、レイゼロール、ダークレイ、風音、ソニア、暁理はそれぞれの感想を述べた。

「ああ・・・・・・そう、ですか・・・・そういう・・・・結末に・・・・なりました、か・・・・・・」

 そして、当然というべきか、フェルフィズもその光景を見ていた。自然治癒は既に始まって来ているので、先ほどよりかは痛みは和らいだ。だが、依然フェルフィズは重傷だった。

「は、ははっ・・・・・・あの子の・・・・あんな笑顔は・・・・初めて・・・・見ました、ね・・・・・・」

 重傷ながらも、フェルフィズは小さく笑った。自身の計画が完全に破綻したというのに。その笑みは負け惜しみの笑みではなく、心からの笑みに見えた。まるで、フェルフィズは心のどこかではこのような光景を望んでいたかのようだった。

「っ・・・・・・ふん。主役の俺様が来る前に終わるとはな。何ともつまらんな」

 すると、シスたちが神殿最頂部にやって来た。シスの他にもレクナルやハバラナス、ヘシュナや光導姫や守護者、闇人なども。最頂部はかなり広い空間だったので大人数が入って来ても、全く問題はなかった。

「アオンゼウと少女たちが手を取り合っている・・・・・・これはいったいどういう状況だ?」

「何だ。もう戦いが終わってるのかよ。ちっ、急いできた意味ねえじゃねえか」

「うーん、色々とよく分からないけど・・・・・・何だかいい感じの雰囲気だね」

「これ、もう帰っていい感じ?」

 レクナル、冥、エルミナ、ノエがそんな言葉を漏らす。他の者たちも、戸惑い或いは戦いが終わっていた事に対する安堵、或いはその両者が混じったような様子だった。

「あー、まだ頭の中がぐわんぐわんしてやがる・・・・・・うぷっ、は、吐きそうだ・・・・・・」

 一方、感動的な場面だというのに我らが前髪野郎は口を押さえていた。やっとシトュウと零無とソレイユの声が止んだのだ。前髪は酷く頭の中を揺らされたような感覚と、酔ったような気分を味わっていた。

『ったく、お前は本当情けねえ奴だな。勝ったんだからもうちょっとシャキッとしろ』

「な、情けなくて悪かったな・・・・・・でも仕方ないだろ。この感覚はどうにもな・・・・・・」

 イヴに呆れられた影人は気持ち悪さを噛み殺すような顔でそう返答した。

「だがまあ・・・・・・まだ俺の仕事は終わってない。いつまでもこの感覚に振り回されるわけにはいかねえな」

 影人は軽く頭を振ると気持ちを切り替えた。未だに気持ち悪さは残っているがそれは無視する。

 影人の視線の先にいたのは鎖で拘束された男――この戦いの全ての元凶、忌神フェルフィズがいた。そう。まだフェルフィズとの決着がついていない。フェルフィズは今はまだ無力化されているに過ぎない。

「さあ・・・・・・今度こそ、俺たちの因縁も終わりだぜフェルフィズ」

 影人は冷たさと覚悟を宿した目でフェルフィズを見つめると、宿敵に向かって一歩を刻んだ。

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