第1887話 無機なる心を救う光(4)
「まだ出力が上がりますか・・・・・・ならば・・・・・・!」
イズは右手を伸ばした。最大出力の一撃を放った事により、イズの本体である大鎌の能力は一時的に焼き切れている。そのため、次の一撃を放ち、現在イズが放っている一撃に重ねて威力を増すというような手段は取れない。
だが、イズはフェルフィズの大鎌の意思だ。本体が放った攻撃とは繋がりのようなものがある。イズはその繋がりを意識し、自身が放った三日月状の死の斬撃に意思としての力を注ぎ込んだ。イズにとっての意思の力とは、より力を深め拡張するような力だ。例えば、影人の『終焉』を超えて斬撃を届かせたような。イズは今回、死の斬撃の出力を更に高めるようにと意識を集中させた。
結果、イズの意思の力を受けて死の斬撃の威力は更に増す。光の奔流に押されていた死の斬撃は光の奔流を押し返し始めた。
「っ、押し返される・・・・・・!? やっぱり、一筋縄じゃいかないね・・・・・・!」
「そんな事は最初から分かり切ってたわ・・・・・・! 陽華、もっともっとよ! これでも足りないならもっと想いを燃やして力に変えるだけッ! そうでしょう!?」
「そうだね明夜! 限界なんて・・・・・・! 1秒ごとに超えればいいだけだ!」
強気な笑みを浮かべる明夜に、陽華も同じく強気な笑みで応える。2人は顔を見合わせ互いの瞳を交錯させる。それだけで力が湧いてくる。何を考えているのか分かる。小さい時からずっと一緒だった幼馴染。かけがえのない親友。もはや魂で繋がった存在。
「さあ越えるよ明夜! まだまだ・・・・・・まだまだァッ!」
「当たり前よ陽華! 私たちならどこまでもォッ!」
「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」」
陽華と明夜が在らん限りの声を上げる。同時に陽華と明夜が纏い、放つ光が爆発的にその輝きを増す。もはや光そのものとなった2人が放つ奔流は、呼応するようにその出力を更に更に増す。いつの間にか、その極みの光はレイゼロールを浄化した時と同じレベルにまで高まっていた。光の奔流は死の斬撃を大きく押し戻した。
「っ、まだこれだけの力を・・・・・・本当にあなた達はどこまでも不可能を超えてくる・・・・・・面白い。ならば、私も限界を超えましょうッ!」
イズは自身の全てを懸けて、意思としての力を死の斬撃に注ぎ込んだ。極限を超えた集中は、まるでイズという存在が燃え上がるような錯覚すら起こさせる。それは、人間で言うならば命を削っているような感覚とでもいえばいいだろうか。イズの意思の力を受けた死の斬撃は、更に更に威力を増し、死神のオーラも一段と濃くなった。再び死の斬撃が光の奔流を押し返す。死の斬撃と光の奔流は再度完全に拮抗した。




