第1885話 無機なる心を救う光(2)
「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」」
忌神の神殿最頂部。陽華と明夜は自分たちの最大浄化技である光の奔流を放ちながら、裂帛の気合いの込もった声を上げていた。2人の放った光の奔流はイズが放った最大級の一撃、死神のオーラ纏う闇色の三日月状の斬撃と激しくぶつかっていた。
「・・・・・・全てを殺すこの一撃と競り合いますか。やはり、あなた達は異常ですね・・・・・・!」
一方、イズは2人のように大きな声こそ上げなかったが、真剣な顔でそう呟いた。フェルフィズの大鎌の攻撃は全てを殺す。それは攻撃でも例外ではない。最大限にまで高めた一撃ならば尚更だ。しかし、陽華と明夜の放つ光の奔流は未だに殺す事が出来ない。むしろ、拮抗している。それは本来ならばあり得ない光景だった。
(この光の奔流からは極限の正の力を感じる。正の力は光の力や生命力、正の感情の力などを内包した力。私の最大級の死の一撃と拮抗しているのは、それと同じくらいに正の力に内包されている生命力が強いから、といったところでしょうか)
イズはあり得ない光景を見つつも、一応納得できる説明を考えた。死の力とぶつかり合う事が出来る力は限られている。同じ死の力か、死すらも呑み込むような特異な力、そして死と反対の力である生の力だ。この光の奔流にはその生の力(つまりは生命力)も多分に含まれている。
「・・・・・・全く、どこまでも厄介な」
イズは敵としての陽華と明夜にそう評価を下した。極限の光の力と死の力のせめぎ合いはまだ続き、凄まじい斥力場と衝撃波を生じさせている。ただでさえ、2つの世界が融合し始め空間が不安定になっているのに、これだけの力の衝突だ。空間は軋み、今にも世界が悲鳴を上げそうだった。このまま、極限の反対の力がぶつかり続ければ、時空の歪みが生じるのも時間の問題だ。
「っ、『終焉』と同義の力と張り合うかよ。無茶苦茶だな・・・・・・それに、この攻撃の激突の余波・・・・・・下手したら前みたいに空間が持たないぜ」
イズと実質的に同じ力を持つ影人も、目の前で起こっている光景がどれだけ荒唐無稽なものかをよく理解していた。それは全てを死に導くという一種無敵の力持っているからこその理解だ。
そして、イタリアでゼノとファレルナの力が激突し、時空の歪みが出来た事を思い出しながら、影人はその問題点に気がついた。これも、その現象を間近で見て、実際に時空の歪みに吸い込まれた体験者であるがゆえの気づきであった。




