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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1884/2051

第1884話 無機なる心を救う光(1)

「っ、この力の余波は・・・・・・」

 第6の亀裂、日本。忌神の神殿の外。亀裂を安定させ風の魔法で応援に駆けつけたレクナルは、上空に凄まじい力の波動を感じた。レクナルが視線を上に、正確には夜の闇に紛れるように聳え立つ、異形の建物の最頂部に向ける。レクナルが感じた力の波動はそこから発せられていた。

『凄まじい光の力と闇・・・・・・いえ、死の力ですか。それがあの場所でぶつかり合っていますね』

「これほどの力のぶつかり合い・・・・・・どうやら、この地の亀裂を巡る戦いも最終局面を迎えているようだな」

 同じく亀裂を安定させ、最後の亀裂であるこの地にやって来たヘシュナとハバラナス(人竜形態)も神殿の最頂部に目を向ける。古き者であるレクナル、ヘシュナ、ハバラナスを以てしても、異形の建物の最頂部から発せられる力の波動は厳しい緊張を生じさせるものだった。

「光の力と死の力の衝突か・・・・・・ふん。アオンゼウが光の力を使うわけがない。という事は、死の力を放っているのはアオンゼウの中にいる奴か。そして光の力・・・・・・少なくとも影人ではないな」

 シスも他の古き者たちと同様に最頂部にそのダークレッドの目を向けていた。シスたちの世界に来た影人、ゼノ、フェリートは全員闇の力を使っていた。そのため、光の力を使っている者はそれ以外の者。つまり、シスが知らない者という事になる。

 正確には、その光の力の波動を生じさせているのは陽華と明夜で、シスはシエラの喫茶店で2人と会った事はあるのだが、陽華と明夜の力の気配までは分からなかったのでそう思ったのだった。

「この光の力の気配・・・・・・感じた事があります。この暖かくも優しい光の波動は・・・・・・」

「ああ。あの時の、レイゼロールを浄化した時の陽華くんと明夜くんの光の気配だ。どうやら、彼女たちは美しいフィナーレに向けて頑張っているようだね」

 対して、光導姫であるファレルナやロゼは、誰が光の力を放っているのか分かった。十数秒前にこの場に到着していた他の光導姫や守護者――真夏、ハサン、ノエ、メティ、プロト、エリア、アイティレ、エルミナ、刀時、ショット、メリー、菲、イヴァン、葬武など光の属性に類し、レイゼロールとの最終決戦の時に陽華と明夜の光輝天臨の光を浴びた者たちも、目の前の建物の最頂部で光の力を放っている者が誰なのか理解していた。

「やってるわね名物コンビ! 全く帰城くんといい、本当いいところばっかり持っていく後輩たちなんだから!」

「だが、あの時よりは多少・・・・・・いや、かなり力が低いな。私がいなかったから、前みたいに『歌姫』の力を増幅させて、全世界の光導姫や守護者から力を集められなかったからか。まあ、それでも尋常じゃない力の波動だがな」

 真夏が明るく笑い菲はそう分析した。一方、凄まじい光の力の気配を感じた闇人たち――ゼノ、クラウン、フェリート、殺花、冥、響斬、ゾルダート、キベリアは少し辛そうな顔を浮かべていた。

「これだけ離れてるのに・・・・・・ちょっとキツイな」

「ええ。私たち闇人にとって光の力は毒のようなものですからね・・・・・・」

「うぷっ・・・・・・き、気持ち悪い・・・・・・」

 ゼノ、フェリートがそう呟き、キベリアが口を押さえる。今フェリートが言ったように、闇人にとって光の力は毒のようなもの。強過ぎる光の力の気配に闇人たちは体調の不調を感じた。

「・・・・・・ふん。宴の終わりにこの俺様が呼ばれていないという事態は気に食わん。行くぞ貴様ら」

「私に命令するな。・・・・・・だが、そうだな。我らの世界のためにも、我らはあそこに行かなければならない」

「もう境界が崩壊するまでの時間もない。俺たちが力を貸し、一刻も早く最後の亀裂を安定させなければな」

『ええ』

 シス、レクナル、ハバラナス、ヘシュナは最頂部を目指し神殿の内部へと向かった。当然、光導姫や守護者、闇人たちもそれに続く。闇人たちからすれば、目指す最頂部は毒の根源に接近するような、ある意味自殺行為であったが、闇人たちは最終決戦の時に光輝天臨の光を浴びている。あの時もキツくはあったが浄化されなかったので問題はないと闇人たちは考えていた。

 何よりも、この状況で最頂部を目指さないという選択肢は、いくら自由奔放な者が多い闇人たちでもなかった。

 ――第6の亀裂、日本。幸か不幸か、陽華と明夜が最後の一撃を放った直後に集った者たち。その結果が何をもたらすのか、今は誰も分からなかった。

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