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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1882/2051

第1882話 真っ向勝負(3)

「と、とにかくそういう事よ! 次に私たちは最大の攻撃をイズちゃんにぶつけるから! でも、死ぬとかはないからそれは安心してちょうだいね!」

「そうだね! それは本当に大丈夫だから!」

 流石にこれ以上いつものやり取りをするわけにはいかないと思ったのか、明夜がビシッとイズに人差し指を向けた。陽華も明夜の言葉に頷き笑顔を浮かべた。

「・・・・・・あなた達は本当に底なしのバカですね。仮に私がその提案を受けたとしても、私はあなた達を殺す攻撃を放ちますよ。すなわち、私の本体による最大級の攻撃を」

「もちろんいいよ! それがイズちゃんに放てる最大級の攻撃なら問題なし!」

「ええ! 最後にお互いのとびっきりの想いをぶつけ合いましょう!」

 陽華と明夜は二つ返事で頷いた。陽華と明夜もフェルフィズの大鎌がどれだけ危険な力を持っているかは知っている。その最大級の一撃となれば、高確率で死の危険があるだろう。もちろん、陽華と明夜も人間だ。死ぬのは怖い。今すぐに逃げ出したいという臆病な気持ちもないといえば嘘になる。

 だが、それでもそれ以上にイズに応えたい、イズを救いたいという気持ちが湧き上がってくる。甘過ぎると言われるかもしれないが、陽華も明夜も敵だからといって殺したり排除したりするのは嫌だった。意思があるなら、言葉が通じるなら、きっと分かり合えるはずだ。陽華と明夜はそう信じていた。

「・・・・・・いいでしょう。自信がなくて逃げたと思われるのも癪です。そこまで言うのならば、その提案に乗りましょう。ただし、あなた達以外の他の者たちが手出しする事はなしです。いいですね?」

 イズはチラリと白麗と影人に視線を移した。白麗は大鎌の状態を戻す力が、影人には死を弾く力がある。あの2人が干渉してくれば、イズは不利になる。まあ、干渉してこなければ逆にイズに有利過ぎるのだが。そこは駆け引きであり、イズがまだ陽華と明夜を敵と見ている事の証明でもあった。

「分かった! みんな、今から何があっても手は出さないで!」

「これから最後の真っ向勝負をするわ! 例え天地がひっくり返っても手出しは無用よ!」

 陽華と明夜が周囲の者たちにそう叫ぶ。その言葉を聞いた者たちは、その顔色を不安なものに、あるいは真剣なものに変えた。

「あらあら、あの子達・・・・・・そこまでの覚悟なのね。ならば、手出しは無粋ね」

「そうじゃの。戦士の覚悟は尊重しなければならん。相分かった。これより干渉はせんと誓おう」

 シェルディアと白麗が頷く。他の者たちも陽華と明夜の覚悟を感じ取ったため、反対の意見を述べる事は出来なかった。

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 ただ、光司と影人だけは互いにアイコンタクトを取った。2人とも互いに何を考えているのかは、それで伝わった。

「よし、じゃあ・・・・・・勝負!」

「これが・・・・・・最後の一撃よ!」

 陽華と明夜の体に纏う光が今までで1番の輝きを放つ。光輝天臨は全ての光導姫と守護者から力を集める事が出来る。事実、陽華と明夜は前回はそうやってレイゼロールを浄化した。

 だが、今回2人はその方法を取るつもりはなかった。前回、全ての光導姫と守護者から力を集める際に力を貸してくれた菲がいないという事も多少は関係はあるが、主な理由はそれではない。

 2人が他の光導姫や守護者から力を集めない主な理由。それは真っ向勝負であるという事と、イズに届ける想いが陽華と明夜、2人だけのものでなければならないからだ。真っ向勝負である以上、他の者たちから力を借りるわけにはいかない。そして、イズを救いたいと真に願っているのは、恐らく陽華と明夜だけだからだ。最後にイズに届ける想いは強い真っ直ぐな想いでなければならない。そうでなければ、イズは救えない。

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