第1877話 最終局面、忌神との決戦2(2)
「ならば、『終焉』に触れてもお前が死なないか試してやろうか?」
レイゼロールがフェルフィズに『終焉』の闇を放とうとする。しかし、シェルディアが待ったをかけた。
「まだダメよレイゼロール。忌神を殺すのは、私たちが彼の野望を砕いた光景を見せた後よ。そうでなければ、真に私たちの勝利とはならないわ」
「ふん、悠長だな。・・・・・・だが、お前の言う事も分かる」
レイゼロールは闇色の鎖を創造すると、その鎖でフェルフィズを雁字搦めにした。鎖によってキツく縛られた事によって傷が更に痛み「うっ・・・・・・」とフェルフィズは顔を顰めた。
「取り敢えずはこれでいいだろう。フェルフィズ、死の前に刻め。我たちにお前が負けたという事実をな」
「は、はは・・・・そう、ですね・・・・私、も・・・・この戦いの・・・・結果、が・・・・分かる・・・・まで、は・・・・死ね・・・・ない・・・・・・」
フェルフィズは冷や汗が滲む顔をもう1つの戦いの方に向けた。レイゼロールやシェルディア、その他の者たちもそちらに顔を向ける。
「やぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
「ふっ・・・・・・!」
そこで繰り広げられていたのは、2人の少女と1体の武器の意思との戦いだった。陽華と明夜が気合いの込もった声を上げながら、拳と杖で攻撃を行う。イズは2人の攻撃を回避し大鎌を振るう。陽華と明夜も大振りなその一撃を回避する。
「・・・・・・加勢はしないのか」
「今はまだね。陽華と明夜が彼女・・・・・・イズを救おうと頑張っているから。でも、時間もないからイズを滅する事の出来る手段を持つ者・・・・・・例えば、レクナルなんかが来たら、すぐにでも加勢するわ。そして、イズを滅する。陽華と明夜にも既に伝えてあるわ」
「・・・・・・そうか。だからあいつも見守っているわけか」
レイゼロールが視線を陽華と明夜から外す。陽華と明夜がイズと戦っている場所から少し離れた場所。そこにはレイゼロールたちと同じように戦いを眺めている少年――影人がいた。『終焉』を発動しているため、影人の姿は金に黒のオッドアイに黒い長髪姿だった。影人は真剣でいて、どこか暖かで、澄んだような、不思議な目で戦いを見ていた。影人から離れた場所には、レイゼロールは知らないが和装の女――白麗もいた。
「ええ。もちろん事は一刻を争うわ。本当ならすぐさまにでも加勢して、符を亀裂に貼らなければならない。フェルフィズを無力化し、白麗の目もイズを見ているこの状況なら符を貼る事は出来るわ。そして、符を守る事も可能でしょう。それは、符を持っている影人も分かっているはずよ」
「・・・・・・だが、影人はそうしないか。なぜだ?」
レイゼロールがその顔に疑問の色を浮かべる。シェルディアは「さあ? 私も明確な理由までは分からないわ」と言って軽く首を横に振った。
「でも・・・・・・きっとギリギリまで見届けたいんじゃないかしら。あの子達の戦いを。一瞬も目を逸らしたくないほどに。あの子達の想いを目と心に焼き付けたいと思いながら。なにせ、影人はずっとあの子達を見守ってきたから。影の守護者として」
「はい。きっと・・・・・・きっとそうだと思います」
シェルディアの言葉に光司が頷く。影人はずっと1人で陽華と明夜を影から見守ってきた。時には敵を演じながら。その陽華と明夜が必死で敵であるはずのイズを救おうと頑張って戦っている。その姿に影人はきっと何かを感じているのだろう。光司はそう思った。
「いずれにせよ、まだ境界は崩壊し切ってはいない。イズを滅する力を持った者もまだ来ていない。だから、今は見守りましょう。それが、今の私たちに出来る事よ」
シェルディアが真祖化した真紅の瞳を、陽華と明夜、イズに向けながらそう言葉を述べる。他の者たちもシェルディアの言葉に異論を唱える事なく、陽華と明夜、イズの戦いを見つめた。




