第1876話 最終局面、忌神との決戦2(1)
「がはっ、ごほっごほっ・・・・・・!」
レイゼロールの姿を確認したフェルフィズは咳き込むと血を吐いた。内臓が潰れ、肺に折れた骨が刺さっているためだろう。全身に奔る激痛にどうにかなりそうになりながらも、フェルフィズはひどく冷静にそう考えた。
「詰みよ」
崩れ落ちたフェルフィズをダークレイが見下ろす。近くにいた暁理、壮司、光司がフェルフィズにそれぞれの武器を突きつける。風音も光のフィールドを解除し式札に戻すと、式札ですぐにフェルフィズを攻撃出来るように式札をフェルフィズの周囲に展開させた。
「あらレイゼロール。来たのね。早速で悪いけど、この人形『終焉』で消してくれないかしら。超再生の力があるからどんなに壊しても再生するのよ。禁呪はかなり力を使うから使いたくないのよ」
「ふん。相変わらず他者の使い方が荒いな。・・・・・・だが、いいだろう」
シェルディアにそう言われたレイゼロールは『終焉』を発動させると、全てを終わらせる闇を喜劇と悲劇の仮面人形に放った。シェルディアが直前で仮面人形から離れる。全てを終わらせる闇は再生中の仮面人形に触れ、仮面人形は闇に包まれ再生する事なくこの世界から姿を消した。これで、フェルフィズの手札は1枚消失した。
「ありがとう。サンドバッグにも飽きてきたところだったから助かったわ。さて、中々いい姿になったわね忌神さん。今まで1番素敵よ」
「そう・・・・です、か・・・・全く・・・・レイゼロール・・・・といい・・・・あなたと、いい・・・・酷いもの、だ・・・・」
真祖化し変化した銀髪を揺らし、真紅の瞳で嘲るようにフェルフィズを見下ろしてくるシェルディア。そんなシェルディアに、フェルフィズはひどく弱々しい笑みを浮かべた。
「そうかしら? あなたに比べれば可愛いものだと思うけど。でも、まだ笑えるなんてけっこう余裕があるのね」
シェルディアはニコリと笑うと、軽く撫でるように右手でフェルフィズの肩に触れた。瞬間、フェルフィズの肩部に新たに激痛が奔った。
「ぐっ!?」
シェルディアに触れられた右の肩部の骨が粉々に砕け折れたのだ。結果、フェルフィズは右腕を動かす事が出来なくなった。
「弱っている者をいたぶるのは趣味ではないのだけれど、あなたは別よ。何度も好き放題にされた恨みもあるから」
「〜っ!?」
シェルディアは続けてフェルフィズの左肩部に触れ、そこの骨も粉々に砕け折った。再びの気がどうにかなりそうな激痛にフェルフィズの顔が歪む。フェルフィズは左腕も動かす事が出来なくなり、両手の自由を奪われた。
「あなたはどんな状況からでも逃げてきた。だから、恨みを晴らすと同時に、あなたの体の自由も封じさせてもらったわ。もうあなたをどこにも逃がさず、何も出来ないようにするためにね。ふふっ、こういうの確か一石二鳥と言うのよね」
「いや、若干違うと思うけどね・・・・・・」
シェルディアの言葉に暁理が軽く突っ込みを入れる。シェルディアは「あら、そう?」と暁理の指摘に軽く首を傾げた。
「まあ何でもいいわ。とにかく、これで私たちはいつでもあなたを殺せる。今度こそ本当に終わりよ」
「げほっげほっ・・・・・・! はは、それは・・・・どうですかね・・・・私は・・・・これでも・・・・悪運が強い・・・・方なんです・・・・よ・・・・・・」
フェルフィズは再び弱々しく笑ってみせた。それは虚勢やはったりにしか見えなかった。




