第1872話 最終局面、忌神との決戦1(1)
「第1式札から第10式札、光の矢を放つ!」
風音が式札から10条の光線を放つ。光線は軽く弧を描きフェルフィズを狙ったが、その前に喜劇と悲劇の仮面人形が立ち塞がり、光線を黒い光刃で払った。
「邪魔なのよ、あんた・・・・・・!」
ダークレイが仮面人形に蹴りを放つ。影人の闇の力によって、肉体が強化され『加速』によって神速の速度に至っている蹴り。普通ならば、反応する事は出来ない。しかし、仮面人形はダークレイの蹴りに反応し左腕でその蹴りを受け止める。そして、次の瞬間、仮面人形の仮面の目の部分に当たる場所が怪しく輝いた。
「っ!?」
その輝きを見たダークレイの視界がぐらりと歪む。その結果、ダークレイは体勢を崩した。
「隙ありですね」
その光景を見たフェルフィズが笑う。敵のすぐ近くで晒した明確な隙。その隙を仮面人形は見逃さない。仮面人形は自身の腹部を開き、そこから白い剣を取り出し、その剣でダークレイを切り裂こうとした。
「やらせねえよ!」
「シッ!」
「はあッ!」
だが、壮司と暁理と光司がダークレイを助けに入った。光司は仮面人形の白い剣を自身の剣で受け止め、暁理は仮面人形の体を切り裂き、壮司は仮面人形の首を大鎌で刈り落とした。
「・・・・・・!」
だが、壮司が首を切り落とした瞬間に、仮面人形は超再生の力で一瞬で頭を復元した。ついでに、暁理が切った傷も。仮面人形はそのまま壮司に蹴りを放とうとしたが、その前に白銀の尾が仮面人形を叩いた。叩かれた仮面人形は遠くに離れた壁に叩きつけられた。
「そろそろお主の顔も見飽きた。いい加減に退場するんじゃな」
白麗は複数の白銀の尾と、炎の妖術で創造した複数の火の狐をフェルフィズへと向かわせた。
「酷いですね。最近、酷い言葉をかけられてばかりな気がしますよ」
しかし、フェルフィズは焦る事なく先程ポーチから取り出した戦闘に使える神器の1つ――赤い剣を乱雑に自身の周囲の空間に振るった。その行為には一見意味がないように見えた。
だが、どういうわけか、白麗の尾と火の狐はフェルフィズに届く前にその手前の空間で止まった。まるで、目には見えない壁に阻まれているように。
「っ、妾の攻撃が・・・・・・なんじゃ、その剣は」
その光景を見た白麗が軽くその白銀の瞳を見開く。白麗の言葉にフェルフィズは小馬鹿にするように笑った。
「わざわざ素直に答えると思いますか。敵にわざと情報を与えて絶望、混乱させる戦術もありますが、基本は馬鹿正直に答えはしませんよ」
フェルフィズは赤い剣を右手で軽く弄びながら、こう言葉を続けた。
「それよりもいいんですか。私に構いイズから目を離して。あなたが今まで私に手を出さなかったのは、イズが持つ不可避の絶対死の力を警戒しての事でしょう。ほら、あなたが私に構っている間にも・・・・・・」
フェルフィズが視線をイズの方に向ける。すると、大鎌に生命力を流し込んだ後なのか、イズが持つ大鎌の刃は怪しい色を放っていた。




