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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1868/2051

第1868話 イズの心(2)

「戦いも対話の1つよ! 今は言葉だけじゃ足りないから! 戦いを通して、私たちの想いをあなたにぶつけているのよ!」

「そうだよ! だから、この戦いの中でイズちゃんも私たちにぶつけてきて! イズちゃんの想いを! イズちゃんの心を!」

 明夜が水の女神と氷の女神を創造する。水の女神は輝く水の息吹を、氷の女神は輝く氷の息吹をイズに放つ。陽華も宙に浮かび、光り輝く炎纏う蹴りをイズに放つ。イズは再び障壁を展開し、陽華と明夜の攻撃を防いだ。

「っ・・・・・・私に、私に心などッ!」

 障壁を解除したイズは、自身の中から湧き上がる思いと衝動、そして大鎌と繋がっているフェルフィズの生命力を大鎌に流し込んだ。

「そんな生物のようなものが、人のようなものが私にあるはずがないッ!」

 大鎌の刃が怪しく輝く。イズは自分を乱す陽華と明夜を認識し大鎌を振るおうとした。

「だから無駄じゃよ」

 ずっとイズに注意を払っていた白麗の瞳に再び複雑な魔法陣が刻まれる。白麗がその目に映したのは、先ほどと同じくフェルフィズの大鎌。結果、白麗の妖術が発動し、大鎌は5秒前の状態に戻りその輝きを失う。

「っ、『破絶の天狐』・・・・・・!」

「妾が目を光らせている内はお主の好きにはさせんよ。さあ、隙は作ってやったぞ」

 イズが白麗を睨む。白麗はイズの目線を受け流すかのように笑うと、その視線を陽華と明夜に向けた。

「あるよ! イズちゃんには心がある! だってあなたは私たちの言葉に反応しているから!」

「心がないなんて事はないのよ! 心があるなら想いは届く! 伝えられる!」

 陽華は白麗が作った隙を使ってイズの体に右の拳を叩き込んだ。明夜も陽華が避けた後に、輝く水の奔流をイズへと当てた。障壁を展開する前に陽華と明夜の攻撃を受けたイズは、水流によって後方へと飛ばされ壁へとぶち当たった。

「くっ・・・・・・」

 超再生の力によって陽華に殴られた胴体部、明夜の水流によって損傷した各部位を即座に修復したイズは、左手で軽く胸部を押さえた。傷は治ったが、2人の攻撃から流れて来た想いが、イズの中を更に騒つかせ掻き乱す。イズは理解してしまった。陽華と明夜が本気でイズを救おうとしている事を。

(何だ。なぜ私はそんな事を理解してしまった。あの2人の光導姫の攻撃に想いを対象・・・・・・私に伝える効果があったのは間違いない。だが、それでも想いを受容する()()が私の中になければ、その効果は意味を持たない・・・・・・)

「・・・・・・バカバカしい。その何かが、心だというのですか・・・・・・」

 イズは気づけば肉声でそう呟いていた。無機質な武器の意思である自分に、心などという機微があるはずがない。考えなくてもわかる事だ。無機質なモノに宿ったモノは無機質なだけの意思。それが当然の摂理だ。

 だが、イズの中には今も何かが湧き上がり続けている。掻き乱されている。感じている。摂理に反するような何かが。

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