第1867話 イズの心(1)
「さあ、行くよイズちゃん!」
「私たちは世界の前にあなたを救うわ!」
光輝天臨した陽華と明夜が各々の武器を構える。すなわち、陽華は赤と白が混じったような輝きを放つ両手のガントレットを、明夜は青と白が混じったような輝きを放つ杖を。
「はあッ!」
陽華が自身の肉体を強化する光をその身に纏う。光と影人の闇を纏った陽華は、翼を大きな光の輪に変化させると地を蹴った。光と闇の身体強化に、光輝天臨による全体的な能力の大幅な上昇、更に影人の『加速』の力。その結果、陽華は超神速の速度で一気にイズとの距離を詰めた。
「っ、私に近づくな!」
イズは周囲に浮いている2つの砲身で、至近距離から陽華に破滅の光を放った。だが、陽華はその光を拳で弾いた。
「なっ・・・・・・」
概念無力化の力を持った光を拳で弾く。そのあり得ない光景に思わずイズは驚愕した。
「ごめん! 拒絶されても私たちは諦めないよ! 何の罪もないイズちゃんを倒して終わりだなんて、そんな結末は嫌だから!」
「それはあなた達のエゴだ! 自身のエゴのために私を巻き込むな!」
イズは湧き上がる何か――イズはそれをまだ感情とは認めていなかった――のままそう叫び、左の蹴りを放った。陽華はその蹴りを右腕で受け止めた。
「分かってる! イズちゃんを救いたいっていうのは私たちの我儘! だけど、それでも! 私たちは諦めない! 死んじゃったら全部そこで終わりだから!」
陽華はイズの足を振り払うと、両手に光り輝く炎を纏わせた。その光は光臨した陽華が纏っていた炎よりも、なお輝いていた。
「私は生物ではない! 私はただの物に宿っただけの意思! 例え私が消えたとしてもそれは死ではない!」
「死だよ! 永遠にイズちゃんっていう存在が消えるならそれは間違いなく死だよ! 死ぬのは悲しいことだよ!」
陽華のガントレットの甲にある装置が開き、その中にあった無色の玉が陽華の拳に纏われていた輝く炎を吸収する。炎を吸収した玉は赤と白の混じった輝きを放つ。ガントレットも赤と白の混じった眩い輝きを放つ。陽華はその光り輝く拳をイズへと放つ。避け切れないと判断したイズは障壁を展開した。超再生の力があるアオンゼウの器ならば、陽華の拳を受けてもすぐに修復され問題もなかったが、イズは陽華の想いが乗せられた拳を受けたくはないと思ってしまった。陽華の拳は障壁に阻まれる。
「黙れ! あなた達の勝手な理屈を私に押し付けるな!」
障壁を解除したイズは、背部の魔法陣から大量の機械の剣を呼び出した。その数はおよそ数百本。その剣たちが一斉に陽華に襲い掛かる。
「だから対話したいのよ! 互いを分かり合うために!」
だが、その直前で明夜が光り輝く水と氷の魔法を放ち、機械の剣たちから陽華を守った。明夜は続けて10条の光り輝く水と氷の奔流を、イズに向けて放った。
「ふん、対話がしたいと言いながら、あなた達は私を攻撃しているではありませんか。矛盾も甚だしい!」
イズは翼と背部のブースターを使い後方に飛びながら、大鎌で明夜の放った水と氷の奔流を切り裂いた。




