第1865話 守るべきもの、救うべきもの(4)
「明夜」
「ええ、やるわよ陽華」
その光の意味を知っている陽華と明夜が、互いの顔を見つめ合い頷く。陽華は右手を、明夜は左手を前方に突き出し互いの手を重ねた。
「「我らは光の臨みを越える。全てを照らし、全てを優しく包む光。その光に、我らはなる!!」」
陽華と明夜が言葉を唱えると、2人の胸の光が輝きを増した。
「っ、何だ・・・・・・?」
「あの光は・・・・・・」
「光臨のその先の光・・・・・・」
「なるんだね。レイゼロールを浄化したあの形態に」
「うわっ!? な、何!?」
「・・・・・・ふん。目障りな光」
「あら、まさかまたあれが見れるなんてね」
「ほう、面白い光を放つ。興味深いの」
壮司、光司、風音、ソニア、暁理、ダークレイ、シェルディア、白麗が、陽華と明夜の胸から発せられる光に視線を移す。レイゼロールとの最後の決戦で意識を失いその光が何なのか知らない壮司と、初めてその光を見る白麗以外は、陽華と明夜が何をしようとしているのか理解していた。
「・・・・・・光の力の爆発的な高まりを検知。製作者、私の後ろに」
「ああ・・・・・・初めてかもしれませんね。光を美しいと思ったのは。なるほど。それが、イズを救うと言ったあなた達の光ですか。ええ、見せてください。あなた達の、人間の心の輝きを!」
イズとフェルフィズもその光に目を奪われる。そして、2人に背を向けていた影人はこう言った。
「見せてやれよ朝宮、月下。お前らの想いの光を」
影人が言葉を放った次の瞬間、陽華と明夜は力ある言葉を世界に放った。
「「光輝天臨!!」」
陽華と明夜の胸に灯った光が白く輝き世界を照らす。その輝きは、全てを暖かく照らし、優しく包む光。数秒後、光が収まるとそこには姿が変化し、神々しい衣装に身を包んだ陽華と明夜の姿があった。
「イズちゃん、あなたに届けるね。私たちの、ううん。みんなの心を。光を!」
「私たちは諦めが悪いの。だから、絶対にあなたを救ってみせるわ!」
光輝天臨した陽華と明夜がイズに決意の込もった目を向けた。2人の目に宿るのは決意だけではなかった。優しさ。愛。そういったものが合わさったような暖かな光。善意の光も2人の目には宿っていた。
「っ・・・・・・」
その目を向けられたイズの中で何かが騒つく。もしくは、騒つくというよりかは、何かに小さなヒビが入ったような感覚か。イズは自分の中に生じたその未知の感覚に戸惑った。そして、その戸惑いを処理する方法を知らないイズは、戸惑いを怒りへと変換した。
「その傲慢な目を、想いを私に向けないでください・・・・・・! 言ったはずです。私は救いなど求めてはいない!」
イズは大鎌に莫大な生命力を流し込んだ。「フェルフィズの大鎌」の刃が怪しく輝く。イズは陽華、明夜、暁理、ソニア、風音、壮司、光司、ダークレイ、影人、シェルディア、白麗を同時に認識すると、大鎌の力で距離を殺し、絶対死の一撃を放とうとした。
「やらせんよ」
だが、その前に白麗の両の瞳に複雑な魔法陣が刻まれた。第101式独自妖術、「流転の逆」。白麗が観測した対象を5秒前の状態に戻す。白麗が今回観測したのはイズではなくフェルフィズの大鎌だった。結果、フェルフィズの大鎌は5秒前の状態、生命力が充填される前の状態に戻る。
「っ・・・・・・」
「ほほっ、前回とは違いお主の情報は妾たちに共有されておる。その大鎌の刃が怪しく光れば要注意、なんじゃろ。ならそうなった瞬間に大鎌の状態を戻せばよいだけじゃ」
輝きを失った大鎌を見たイズが軽くその目を見開くと、白麗が口元を隠しながら笑った。




