第1864話 守るべきもの、救うべきもの(3)
「イズちゃん! 私たちは何度でも言うよ! 私たちはあなたと戦いたくない! あなたを救いたい! あなたと友達になりたいの!」
「そのために話をしましょう! ガールズトークよ! あなたが無茶苦茶にしようとしている世界には美しや楽しさが溢れている! まずはそれを知ってほしいの!」
陽華と明夜はイズに向かって言葉を放つ。2人のどこまでも真っ直ぐな言葉を聞いた白麗は、面白いといった様子で陽華と明夜に白銀の瞳を向けた。
「ほう、あ奴らかシェルディア。お前が言っていた、アオンゼウの器に宿るモノを救おうとしている者たちは。この状況でよくもまあ、あれだけ堂々と真っ直ぐにあんな事が言えるの。酔狂な奴らじゃ。じゃが、嫌いではない。帰城影人に負けず劣らず面白い奴らじゃの」
「でしょう? 私も陽華と明夜の事は気に入っているの」
白麗の感想を聞いたシェルディアは爪撃を放ち続けながら白麗に同意した。
「減らず口を・・・・・・言ったはずです。そんなものは願い下げだと・・・・・・!」
シェルディアの爪撃からフェルフィズの身を守るように大鎌を振るっていたイズが、不快げに顔を歪める。イズは自身の周囲に浮遊している2つの砲身から破滅の光を放った。2つの光は陽華と明夜に向かって真っ直ぐに進んで来る。
「願い下げ、か。ああ、そうだな。お前のその気持ちは分かるぜ」
だが、光が陽華と明夜に届く前に闇が光を遮った。影人の『終焉』の闇だ。影人は陽華と明夜を背に、2人を守るように立ちながら、イズへの共感を口にしながらもフッと笑った。
「だが、こいつらはしつこいぜ。どれだけ拒絶しても諦めない。意志を貫き押し通す。加えて度がつくお人好しで無駄に明るい。・・・・・・正直、俺は嫌いなタイプだ」
「「えっ!?」」
このタイミングでそんな事をカミングアウトされた陽華と明夜は、驚きとショックを受けた顔になった。
「でもな、そんな奴らだからこそ、そんな奴らにしか出来ない事がある。戦って敵を倒して終わりじゃない。敵と分かり合って、救う事だって出来る。・・・・・・こいつらは、人の善意の可能性なんだよ。その善意の光はどんなものだって照らす」
黒と金の瞳を真っ直ぐにイズに向けながら、影人は言葉を紡ぐ。陽華と明夜が光導姫になり、影人がスプリガンになる事を半ば強制的に決められたあの日。影人は陽華と明夜の中に人の善意を見た。美しく輝くような善意。それは光だ。人の善意の光。
「俺の仕事はそんな可能性を持ったこいつらを守る事だ。・・・・・・まあ、面倒くさくて危険極まりないし、全く割に合わねえがな。だから、俺の仕事を早く終わらせるためにも、さっさと救われてくれよ。イズ」
「私の名を気安く呼ばないでください。帰城影人・・・・・・!」
影人が口角を少し上げる。その笑みを見たイズは苛立ったように、周囲が水色で中心が赤という特徴的な目で影人を睨みつけた。
「帰城くん・・・・・・」
「・・・・・・全くツンデレなんだから」
影人の言葉を聞いた陽華と明夜は、驚きと嬉しさが入り混じったような表情を浮かべた。スプリガンが、自分たちにとって特別な人がそう言ってくれた事に、自分たちをそう思ってくれている事が、陽華と明夜の力になる。
そして、その力が2人の胸に輝かんばかりの光を灯した。




