第1863話 守るべきもの、救うべきもの(2)
「イズ。新しいお客様はどうやら少しせっかちのようです。おもてなしをしてあげなさい」
「了解しました。排除します」
イズは背中の魔法陣から大量の機械人形、機械の剣、端末装置を呼び出した。加えて翼部から青い煌めきも召喚する。アオンゼウの器の攻撃機能を全て呼び出した形だ。
「あらあら、随分と豪華ね。しかも、機械人形以外は概念無力化の力が付与されているというのだから恐ろしいわ」
「はっ、下手な芝居じゃなシェルディア」
「嫌ね、本心よ」
「行きさない」
シェルディアと白麗が緩やかな様子で会話していると、イズが指令を下した。大量の機械人形、機械の剣、端末装置、青い煌めきが1人でに動き攻撃を行う。影人は『終焉』があるので回避行動を取らなくとも問題はないが、陽華、明夜、暁理、風音、ソニア、壮司、光司、ダークレイは回避行動を行った。と言っても、彼・彼女たちには影人が身体能力の強化、目の強化、『加速』の力を施してある。ゆえに、絶対に避けれないというような事はなかった。
「凄まじい物量ね。だけど、壊せないわけじゃないのよね」
シェルディアはニィと人ならざるモノの笑み――恐らくは化け物や怪物と呼ばれるような――を浮かべると、両手の爪を伸ばし、片方の爪で首筋を深く切り裂いた。シェルディアの首から凄まじい量の血が噴き出す。血は流体状の斬撃と化し、機械の人形たちを切り裂いた。
シェルディアは両手の爪に影を纏わせ両腕を無造作に振るった。放たれるは全てを切り裂く真祖の爪撃。しかも、影で強化されたものだ。影纏う爪撃は機械の剣や端末装置を次々と切り裂いていく。
「そうじゃの。概念無力化の力があったとしても、不壊ではない。ならば、方法はいくらでもある」
白麗も周囲から自身の白銀の尾を複数本呼び出す。白麗は白銀の尾で機械の剣や端末装置、機械の人形を叩き潰し、青い煌めきを蹴散らした。
「おいおい・・・・・・これが現実の光景かよ・・・・・・」
シェルディアと白麗が造作もなくイズの攻撃を迎撃する光景を見た壮司は、どこか呆然とした様子でそう呟いた。荒唐無稽な光景はこれまでも幾度となく見てきた。
だが、今壮司の目の前に広がる光景は、荒唐無稽中の荒唐無稽だ。言葉を絶するような暴力。力そのもの。シェルディアと白麗の力を正面から見た壮司は、畏怖の感情を抱いた。風音、光司も壮司と似たような様子だった。
「うわぁ・・・・・・シェルディアちゃん、尋常じゃなく強いんだ。可愛さとか綺麗さとか優雅さとか上品さとかだけじゃくて、強さまで兼ね備えてるなんて・・・・・・反則だよ」
「だよね。味方で凄い頼もしいけど・・・・・・本当に強力なライバルって感じだよ」
「? あんた達何の話をしてるのよ」
一方、とある事情からシェルディアに対し危機感を抱いた(もしくは抱いていた)暁理とソニアは何とも言えないような、難しそうな顔でそんな言葉を呟いた。2人の言葉を聞いたダークレイはよく分からないといった顔で首を傾げた。
「シェルディアちゃんも白麗さんも凄い! 私たちも負けてられないね明夜!」
「そうね陽華。私たちは私たちがすべき事を、イズちゃんに語りかけ続けましょう」
陽華と明夜はシェルディアと白麗が迎撃している光景を見て、自分たちを鼓舞した。




