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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1859/2051

第1859話 亀裂を巡る戦い、決着5(3)

「・・・・・・一応、2つだけど方法はあるにはあるわ。1つはあんた達の誰かが使ったっていう、精神を顕在化させる魔法よ。精神を表に引き摺り出せば、概念無力化やら再生の力は使えないんでしょ?」

『ええ。ですが、その方法はあの写し身に対しては恐らく意味がないと感じます。あの写し身に精神が宿っているとは思えません』

「ちっ、じゃあもう1つの方法ね。でも、これは現実的じゃないわ」

『構いません。言ってください』

 ヘシュナがキベリアを促す。キベリアは渋々といった様子で口を開いた。

「・・・・・・私がずっと研究していた第11の魔道。それを使えば、あいつの存在を消し去れる・・・・・・いや、そもそも《《存在しなかった》》ことに出来るわ」

「「「っ!?」」」

 キベリアのその言葉を聞いたメリー、菲、イヴァンが驚いた顔になる。葬武は「・・・・・・」と顔色を変えず、ゾルダートは「へえ・・・・・・」と面白いといった顔になった。

「ただ、11の魔道は理論は完成してるけど、それを最初にこの世界に開く儀式が出来ていない。その儀式をしなければ、私は11の魔道の力を使えない。そして、その儀式には莫大な力がいるのよ。今の私じゃ到底賄えないほどの力がね。だから、現実的じゃないって言ったのよ」

『・・・・・・なるほど。要は力があればいいのですね』

 キベリアの説明を聞いたヘシュナは頷くとフッとその姿を消した。すると、次の瞬間キベリアの中に尋常ならざる力が生じた。

「っ!? なによこの力・・・・・・」

 自身の中から溢れ出る凄まじい力にキベリアが戸惑う。すると、キベリアの中に声が響いた。

『あなたと同化しました。これで、あなたは私やこの世界の精霊の力を使う事が出来ます。どうですか。これであなたが言っていた力は賄えますか?』

 それはヘシュナの声だった。己の内から響くヘシュナの言葉を聞いたキベリアは驚きながらも、やがて力強く頷いた。

「ええ、十分過ぎるわ。これなら開けるわ。私の第11の魔道が・・・・・・!」

 己の内から力が溢れ、外からも力が流れ込んでくる。それは純粋なる自然のエネルギー。キベリアは闇人。ゆえに闇の力を扱うが、ヘシュナと同化して得られた力は何色にも変わる力。これを闇の力に変換すれば、魔法を行使する力になる。そして、キベリアは『変換』の闇の性質を持つ魔女。それくらいは造作もない事だった。

「あんた達、私が11の魔道を開くまでの時間を稼ぎなさい! その後は私があいつを倒してやるわ!」

 キベリアはニヤリと自信溢れる笑みを浮かべ、周囲の者たちにそう言った。

「はあ? どういう事だ。状況が見えねえ。というか、あの光った奴はどこに行きやがったんだよ」

「私の中よ。私が魔法を使うための力の源になってくれてるわ。だから、あんたらは私のサポートをしなさい。勝つわよ」

「ひゅー、格好いいねキベリアさん。了解したぜ。そういう事なら指示に従ってやるよ」

「偉そうなのは気に食わないですけど、世界のためですわ。淑女の嗜み国際条約第64条。淑女は大局を見るべし。大義のためなら、例え闇人の指示にでも従いますわ」

「まあ、そういう事なら仕方ないか。本当、面倒くさいけど」

「・・・・・・どうとでもすればいい。俺は奴と戦い続けるだけだ」

 菲の疑問にキベリアが答え、ゾルダート、メリー、イヴァン、葬武が了解の意を示す。そして、ヘシュナがキベリアと同化したと同時に、写し身を切り裂き続けていた光と風の刃が消えた。写し身の体が再生され自由になる。写し身はバイザーの青い単眼をキベリアたちに向けた。

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