第1858話 亀裂を巡る戦い、決着5(2)
「・・・・・・!」
だが、写し身の体には超再生の力も宿っている。風刃に切り裂かれた写し身の体はすぐに元通りに修復された。写し身は両腕の砲身を実体剣と光刃に変えると、背部魔法陣から大量の機械の剣を呼び出した。写し身は端末装置からレーザーを発射させ、ヘシュナ以外の者たちを端末装置で攻撃した。そして、写し身は大量の機械の剣と共にヘシュナへと突撃した。
「ちっ、無限にレーザー撃って来んなよ! おい闇人! さっさとさっきのやつやれよ!」
「何で私があんたに命令されなきゃならないのよ! というかくっつくな! ああもう、うざったいわね!」
菲に抱きつかれたキベリアは苛立った様子になりながらも、光を呑み込む暗闇の穴を自身の前方に出現させた。レーザーはその穴に飲み込まれる。メリー、イヴァン、葬武、ゾルダートは何とかレーザーを回避する。
『闇よ。光を吸いなさい。光よ。刃となり切り裂いて』
ヘシュナは避けるメリーたちを守るべく、キベリアが出現させたものと同じ、闇の穴を複数出現させた。闇の穴はレーザーを呑み込む。メリーたちは格段にレーザーが避けやすくなった。
そして、同時に光を刃の如き事象として呼び出し、その光刃で端末装置や機械の剣を全て切り裂く。写し身本体も光刃に切り裂かれたが、超再生の力ですぐに修復される。損傷を厭わずに突撃した写し身は翼から、極小の刃の群れである青い煌めきを呼び出す。刃はヘシュナを取り囲むように展開し、ヘシュナを襲う。写し身は同時に、両腕の実体剣と光刃による神速の斬撃を放つ。しかし、ヘシュナは青い煌めきや写し身の斬撃を受ける前に、再びフッとその姿を消した。
『こちらの世界でもある程度自由に力は操れますか・・・・・・協力に感謝します。この世界の精霊たちよ』
写し身の後方に現れたヘシュナは、感覚を確かめるようにそう呟いた。ヘシュナは精霊。だが、この世界とは異なる世界の精霊だ。世界の事象たる精霊であるヘシュナは、様々な概念もしくは現象を操る事が出来る。
だが、それはあくまで自分が属する世界での話だ。ゆえに、ヘシュナはこちらの世界で満足に力を振るう事が出来るか疑問だったが、こちらの世界の精霊がヘシュナに協力してくれているため、問題は全くといっていいほどなかった。
(しかし、私の攻撃ではアオンゼウの写し身は滅しきれない。写し身を滅する可能性があるとすれば・・・・・・)
ヘシュナはメリーたちの方に顔を向けた。そして、メリーたちの近くに一瞬で現れた。
『あなた方に確認したい事があります』
「のわっ!? ヘ、ヘシュナさん? いつの間に・・・・・・」
突如として近くに出現しそう声を掛けて来たヘシュナに、メリーは驚いた顔を浮かべた。
「情けねえ声だな。で、確認したい事って何だよ」
菲はこんな状況でもメリーをバカにする事を忘れずにそう言うと、ヘシュナにそう聞き返した。
『あなた達の中に写し身を滅しきれる力を有した方はいますか? 私の力では写し身を滅し切る事は出来ません』
「・・・・・・!」
ヘシュナが言葉を述べると、写し身が両腕を再び砲身に変え、ヘシュナたちに破滅の光を放った。ヘシュナは闇の穴を生じさせ、破滅の光を飲み込ませた。
『光よ、風よ。刃の籠となって切り裂き続けなさい』
ついでに、ヘシュナは光と風の刃で写し身に反撃した。写し身はバラバラに全身を切り刻まれた。写し身は再生したが、再び光と風の刃が写し身を切り裂く。ヘシュナはしばらくの間、光と風の刃をその場に止まらせた。結果、写し身の体が切り刻まれ、再生するという光景が繰り返された。これで話す時間が稼げるだろう。
「俺はねえな。で、特殊能力を持たねえ守護者もない。光導姫組はどうだ?」
「概念を無力化して再生もする奴を滅しきれるわけねえだろ。私もそんな力はねえよ」
「残念ですが、私もですわ」
『そうですか・・・・・・あなたはどうですか?』
ゾルダート、菲、メリーの答えを聞いたヘシュナが残る1人、キベリアを見つめる。キベリアは「うっ・・・・・・」と嫌そうな、微妙な顔になった。




