第1854話 亀裂を巡る戦い、決着4(3)
「彼が概念無力化の力と超再生の力を無効化してくれるならば、写し身を倒す事は容易だ。勝利への道は開けた。後はそれを突き進むだけだ」
「はあー・・・・・・分かった。分かったよ。僕も男だ。そこまで言われちゃ引き下がれない。何が何でも、死ぬ気で斬って見せるよ。その厄介な力ってやつを」
レクナルにまで写し身を倒すための前提にされた響斬は、大きくため息を吐き覚悟を決めた。
「感謝する。異世界の剣士よ。では、戦場に戻ろうか」
レクナルが再び風を操る魔法を行使する。そして、レクナル、アイティレ、エルミナ、刀時、ショット、冥、響斬は風に運ばれ再び写し身が守る亀裂へと移動した。
「・・・・・・」
ジッと佇んでいた写し身が顔を上げ正面を見つめる。すると、先ほど退却したレクナルたちが風に乗って再び現れた。
「よう、待たせたな。てめえをぶっ潰しに・・・・・・戻って来たぜ!」
「今度こそ、1回は斬らせてもらうぜ!」
「私もしっかり殴る」
冥は戻って来た瞬間に地を蹴り、写し身との距離を詰めた。刀時とエルミナといった近距離戦闘型の者たちも冥に続くように地を蹴った。
「・・・・・・!」
写し身は背中の魔法陣から、大量の機械の剣や端末装置を呼び出す。機械の剣と端末装置から放たれたレーザーが冥、刀時、エルミナを襲う。
「フッ・・・・・・!」
だが、同時にレクナルは弓に矢をつがえていた。レクナルが矢を放つ。レクナルが放った矢は一矢だけだったが、途中で緑色の魔法陣が現れた。矢は魔法陣を潜ると、数十にまで増えた。数十に増加した矢は、それから機械の剣と端末装置を穿ち、写し身の召喚した攻撃手段を無力化した。レクナルが使ったのはあくまで増加の魔法だけ。放たれた矢の威力は、魔法も何もない純粋なるレクナルの力だ。ゆえに、概念無力化の力は働かなかった。
「おらよッ!」
「フッ!」
「いくよ」
レクナルが機械の剣と端末装置を無力化したため、冥、刀時、エルミナは写し身に接近する事に成功した。冥は闇纏う蹴りを、刀時は右袈裟の斬撃を、エルミナは右のストレートを写し身へと放った。
「・・・・・・!」
写し身は3人の攻撃を避けると、右腕を実体剣に、左腕を光刃に変えた。そして、翼から極小の刃の群れである青い煌めきを出す。瞬間、どこからか弾丸が飛来し、写し身の体を撃つ。だが、弾丸は写し身の体を貫く事は出来なかった。
「やっぱ効かねえか。仕方ねえ、役割を狙撃手から賑やかしに変えるか。路肩に落ちてるイカした空き缶になるぜ」
写し身を狙撃したショットは自分が役立たずであることを悟ると自虐的に笑った。レクナルはチラリと響斬を見るとこう言葉をかけた。
「私は前衛の3人を援護しつつ、アオンゼウの写し身を攻撃する。君が集中する時間は稼ぐから、概念無力化と超再生の力の事は頼む」
レクナルは一方的にそう言うと、弓を引きながら駆けて行った。




