第1845話 亀裂を巡る戦い、決着2(3)
「おい、まだか」
「ああ、ごめん。一応、イズが見せてそいつが見せてない能力としては、障壁の展開、雑魚・・・・・・機械人形の呼び出しとかだね」
写し身を攻撃しながらシスがゼノにそう聞く。ゼノは以前のヘキゼメリでのイズとの戦い、写し身との戦いの記憶を思い出しながら、そう返答した。
「なるほどな。いいだろう。殺すのはよしてやる。さて、そろそろいいか」
シスは細切れにした写し身の残骸を適当に蹴り飛ばした。蹴り飛ばされた残骸は超再生の力で徐々に形を取り戻し――
「・・・・・・」
やがて完全にその姿を取り戻した。
「ふむ。やはりな。明らかにアオンゼウより再生の速度が遅い。とはいえ、概念無力化の力は有している。アオンゼウと同じで禁呪は意味をなさんだろうな」
かつてアオンゼウを封じた者としての観点から、シスが一種の見解を示す。
(アオンゼウと同じならば意識を引き摺り出して死を与えるのがこいつを無力化する方法だが・・・・・・精神を顕在化させる術は俺様にも使えん。こいつらが使える可能性もゼロではないが限りなく低いだろうな。いや、そもそもこいつに意思はあるのか? こいつは一言も言葉を発していない。言葉とは意思の発露だ。イズなるモノが入る前のアオンゼウも言葉は発していた。ならば、こいつに意思は・・・・・・)
「・・・・・・!」
シスが思考を巡らせていると、写し身が背部の魔法陣から大量の機械の剣とレーザを放つ端末装置を、翼から極小の刃の群れである青い煌めきを呼び出す。それらは一斉にシスに狙いを定め、今にも攻撃を行おうとしてきた。
「ふん。他愛もなく迎撃してやろう」
シスが軽く構える。だが、そのタイミングでファレルナが動いた。
「やらせません!」
ファレルナが自身の背後から漏れ出る浄化の光を高め、手の形にする。光の手は機械の剣や端末装置、青い煌めきを全て包み込んだ。何かを傷付ける力すらも浄化するほどに強まった浄化の光は、写し身の攻撃手段を全て地に落とした。
「っ? おい、そこの女。貴様、今何をした?」
「はあ、はあ、はあ・・・・・・私の光で、何かを傷付ける力を無力化しました。これで、地面に落ちている物は使えません」
その光景を見たシスが背後を振り返りファレルナを見つめる。一気に強力な力を使用したファレルナは、疲れたような顔を浮かべながらもそう答えた。
「概念無力化の力を持つ攻撃手段を全て無力化するか・・・・・・面白い」
シスはフッと興味深そうな笑みを浮かべた。概念無力化の力を無力化する。そのような方法があるならば、写し身を倒す事も可能だ。
「おい、貴様のその力で奴の体に施されている概念無力化の力を無力化しろ。そうすれば、俺様が奴に止めを刺してやる」
「・・・・・・そうか。概念無力化の力がなくなれば、俺の『破壊』も届く。超再生の力があるけど、その再生の力よりも早く壊せばいいだけだ。それなら・・・・・・うん。勝機が見えてきたね」
「だったら、私の呪いも届くって事!? なら大丈夫よ! 対象を呪えさえすれば私は無敵なんだから! 頼むわよ『聖女』!」
シスの言葉を契機として、ゼノと真夏もその事実に気づく。シス、ゼノ、真夏の3者からそう言われたファレルナは少し不安げな顔を浮かべた。




