第1843話 亀裂を巡る戦い、決着2(1)
「ふん、しかしいざ来てみれば・・・・・・どいつもこいつも死にそうではないか。情けんな。これが異世界の戦士どもか」
第2の亀裂、イギリス。ファレルナ、真夏、ハサン、ノエ、ゼノ、クラウンVS魔機神の写し身1号の戦い。写し身を蹴り飛ばしたシスは周囲に倒れている者たちを見下ろし、そう呟いた。
「っ、あなた・・・・・・は・・・・・・?」
ファレルナがシスを見上げる。その問いかけにシスはこう答えた。
「俺様は絶対無敵の真祖、シスである。シェルディアの奴と同じ吸血鬼だ。面倒で不愉快で仕方がないが・・・・・・先ほど言ったように、貴様らを助けてやる」
シスは影を伸ばしファレルナ、ノエ、クラウン、真夏、ゼノ、ハサンに触れた。そして、影を媒介として自身の無限の生命力を流し込む。その結果、6人の傷はたちまちに、完全に癒えた。
「っ、これは・・・・・・」
「傷が治った・・・・・・?」
ゼノとノエが立ち上がり自分の体を見下ろす。他の者たちも同様に、癒えた自身の体を見て驚いている様子だった。
「俺様の高貴で貴重な生命力を貴様らにくれてやった。吸血鬼は無限の生命力を持つ者。他者に生命力を分けて傷を癒すなど容易いものよ」
影を元に戻したシスが偉そうな態度全開で腕を組む。シスの説明を聞いた真夏は「げっ、あんたあいつと同じ吸血鬼なの」と一瞬嫌そうな顔を浮かべた。真夏はシェルディアに1度完膚なきにまで負けている。ゆえに、吸血鬼に対してあまりいい印象はなかった。
「でもまあ、味方なのは素直に頼もしいわね。ありがとうねあんた。確かシスだったわね。褒めて遣わすわ!」
しかし、真夏は持ち前の朗らかな気質を発揮し笑顔になると、シスに感謝の言葉を述べた。何とも真夏らしい礼の言い方である。
「褒めて遣わすだと? 貴様、誰にものを言っている。殺すぞ」
「うっ、悪かったわよ。別にそんなに怒らなくてもいいじゃない・・・・・・」
だが、相手は真夏よりも何倍も傲岸不遜なシスである。シスはギロリとそのダークレッドの瞳で真夏を睨みつけた。睨まれた真夏は、いじけたように顔を背ける。
「いやはや、しかしシェルディア様と同じ吸血鬼の方が助っ人に来てくださるとはー。一騎当千の戦力が来たとあれば、風向きも変わりそうですー」
「何だ貴様は。奇怪な見た目をしているな。だが、言っている事はまともだ。そうだ。俺様が来たこの瞬間、貴様らから敗北の文字は消えた。あるのは勝利だけだ」
「うわー・・・・・・俺、あそこまで偉そうで物事を確信してる奴初めて見たかも」
「真なる実力者か、或いは真なる愚者か・・・・・・すぐに分かる事か」
クラウンに不審な目を向けながらも、シスがそう宣言する。自信満々という表現を通り越して、当然といったシスの様子に、ノエとハサンはなんとも言えない顔を浮かべた。
「・・・・・・」
シスに蹴り飛ばされた写し身が体を起こす。血と影を纏った真祖の蹴りをまともに受けた事によって、写し身の体は半壊していた。だが、即座に超再生の力が働き写し身の体は元通りに修復された。立ち上がった写し身は、バイザーの青い単眼でシスを捕捉した。




